ボクシングの興行全体が中止になることは珍しいが、それが立て続けはまさに前例がないことだろう。

11月15日に東京・両国国技館で予定されたダブル世界戦が、メインのWBA世界バンタム級王者井上拓真(大橋)の負傷により、延期となった。さらに11月11日に愛知県武道館で予定された「3150FIGHT survival」もメインのWBOアジアパシフィック・スーパーフェザー級王者力石政法(緑)の対戦相手がアクシデントで来日不可能となり、興行は延期となった。

「3150-」の延期が決まった日、亀田プロモーションの深町マネジャーから連絡をもらった。「本当に悔しいのですが…」とその声は苦渋に満ちていた。

1つの興行を成り立たせるためにマッチメークを始め、中継、演出、チケット販売などすさまじい労力を費やす。今回は特に名古屋初開催で亀田興毅ファウンダーも、相当に悩み抜いた末の決断と聞く。不可抗力の出来事とはいえ、その無念さは第三者には計り知れないものがある。

興行主もだが、選手にとってもたまらない。力石の相手だったカルロス・フローレス(メキシコ)はパスポートの盗難被害にあって来日不可能となった。力石は「落ち込むというか“無”です」とショックを隠さなかった。

ボクシングは厳しい体重制の競技。厳しい練習で技術を磨きながら、平行して過酷な減量に取り組む。力石でも現級では毎試合、ギリギリのウエートとの戦いを行ってきた。それだけに直前の試合中止は、メンタル的にも大きなダメージを背負う。

スポーツの世界。何事にもアクシデントはつきものだろう。しかしなあ、と関係者や選手の声を聞くと思ってしまう。こういう“珍事”はもう起きてほしくない。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)