日馬富士の新しい化粧まわしは、意外な力を秘めているかもしれない。金の糸で刺しゅうされ、中央には24金の純金プレート300グラム。「3000、4000万円ぐらい」(日馬富士)という豪華な一品をデザインしたのは、千葉・市原市在住の銅版画家、多賀新氏(69)だ。4日目に正面席から初めて土俵入りを見届け「キラキラ光って、華やかですね」と目を細めた。

 後援会関係者からの紹介で「横綱なので同じじゃないように」と、中央に「東洋の不死鳥」と呼ばれる鳳凰(ほうおう)、左右にはそれぞれペガサスとユニコーン、竜と麒麟(きりん)を合体した空想の神獣をあしらった。日馬富士が2場所休場中に銅板を削り、通常の3倍の3カ月かけて完成。九州場所で復活優勝を決めた横綱も「一目ぼれしました」とお気に入りだ。

 高安が新十両から着ける化粧まわしのチャプリンも描き、幼少期には北海道・本別町の実家で営んでいた料理屋を訪れた横綱千代の山らに抱っこされた。それだけに「(角界との)縁を感じます。銅版画の面白さも再発見して、私も復活した」。2日目に金星を献上した日馬富士も、逸ノ城に完勝して3勝目。不死鳥のごとく、強さを取り戻そうとしている。【桑原亮】