横綱や大関に勝った下位の力士は、NHKのインタビュールームに呼ばれる。ほとんどの力士はこれに応じるが、断る場合もある。

 元大関の琴奨菊は初日から1横綱2大関を破ったが、1度もインタビューを受けなかった。なぜか?

 「その方がいいかなと思った。今後においても、今においても…」。今年初場所まで大関を務めていた自負もあるだろう。日馬富士に勝って初金星を挙げたが「ああいう内容だったからね」と、テレビで喜びを語ることは控えた。

 元大関の初金星は、雅山(現二子山親方)以来10年半ぶりだった。雅山は、大関から陥落して33場所目に横綱朝青龍に勝ち、インタビューを受けた。二子山親方は「僕は強い横綱に勝ってうれしかったので行きました。でも、大関戦に勝っても一切行きませんでした」と振り返る。大関に勝つたび、断り続けた。「現役中は元大関と言われるのが嫌でした。大関に戻るつもりでいましたから」。

 勝ってテレビカメラの前に立つかどうかは、本人次第。放送時間の関係もあるが、殊勲の白星の後にインタビューがなかった場合、そこには力士の生きざまが反映されている。【佐々木一郎】