<大相撲秋場所>◇6日目◇15日◇両国国技館

 初土俵から21年目の初体験。東十両2枚目安美錦(38=伊勢ケ浜)が琴勇輝にとっくり投げを見舞った。通算43手目の決まり手だ。

 「技のデパート」と称された元小結舞の海は33手。多彩な取り口で知られた元小結旭鷲山は46手。前人未到の優勝39回の横綱白鵬は41手。そんな名手たちも未経験の珍技だ。相手の首、頭をとっくりに見立て、両手で挟み左右にひねって倒す。01年初場所で新設された12の決まり手の1つで、いまだ幕内では1度も出ていない。安美錦は「当たって右を張って。差そうと思ったら(相手が)前に出てきたからこう…」。ジェスチャー付きで、いかにも説明しづらそうに解説した。

 今場所3日目、新十両の大成道も照強に決めた。十両で約2年ぶりの珍事がわずか3日後に飛び出した。くしくも大成道は同郷の青森出身。「そうなんだ。巡業中にとっくりで一杯やりたいね」。星も4勝2敗。再入幕を目指す大ベテランはご機嫌だった。【加藤裕一】