東日本大震災が起きた3月11日が初日と重なり、初日恒例の八角理事長(元横綱北勝海)の協会あいさつ前に1分間、黙とうの時間が設けられた。八角理事長は代表して「この場をお借りし、被災された方々には心よりお見舞いを申し上げ、追悼の意を表します」とあいさつした。関係各所にも震災が起きた午後2時46分を目安に、同様に黙とうするよう通達されていた。

 それに先立ち、被害の大きかった福島・相馬市出身で序二段の森(25)、同県南相馬市出身で序ノ口の東山(23)という玉ノ井部屋の2人が土俵に立った。東山は敗れたが、今場所で東政馬から改名した森は、白星発進。もろ差しを許しながら左四つに巻き替え、最後は寄り切り「心機一転、改名初戦で勝ててホッとしたし、特別な日なのでうれしい」と笑顔を見せた。

 ともに震災当時は入門しており、家族と1週間以上連絡がつかず、不安な日を過ごした。だからこそ東山は「自分の相撲で地元が少しでも元気になれば」と、負けたもののこの日に懸けていた。取組前に出身地がアナウンスされるなど、相撲は他のスポーツ以上に郷土とのつながりが強い。八角理事長は「(震災を)忘れていないということ」。6年ぶりに3月11日が初日となった協会あいさつに込めた思いを振り返った。【高田文太】