苦労したのが報われて、年齢を重ねてはい上がってくるのも味があっていい。一方で、活性化のためには若手の台頭が不可欠だ。9月9日に初日を迎える大相撲秋場所(両国国技館)でまた一人、生きの良い新入幕力士が出てきた。初土俵から8年半で幕内の座を射止めた23歳の隆の勝(千賀ノ浦)だ。

両国国技館内で行われた8月27日の番付発表会見では、喜びのコメントがあふれていた。師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)を隣に着席しても終始、笑みを満面にたたえ「めちゃめちゃ、うれしいっす。幕内はテレビで見る世界。番付の一番上に名前が出るのは本当にうれしいっす」。大勢の報道陣を前に、現役時代は、その柔和な笑顔から「ドラえもん」の愛称があった師匠も、汗をかきかき笑みを浮かべていた。先代(元関脇舛田山)から16年4月に部屋を継承して初めての幕内力士。関取としても隆の勝が第1号で、喜びもひとしおだろう。

その隆の勝にも挫折の時はあった。初土俵から幕下までは約2年で通過。群雄割拠の険しい幕下で10場所務めた後、1度だけ三段目に落ちた。すぐに幕下に戻った後、5場所後に再び三段目へ。この滞留も1場所だけにとどめたが、この時期が「壁にぶち当たって(十両に)上がれないかも、と思い心が折れかけた」という挫折の時だった。それも「親方や身内、回りのいろいろな人たちから応援の声をもらった。それが支えだった」と奮起。稽古量は増え、また師匠の「稽古場の相撲を取ればいい、というアドバイスで気持ちをうまく切り替えられるようになった」と精神的な安定もプラスになった。

昨年九州場所で晴れて、新十両に昇進。しこ名を先代の現役時代から1文字もらった「舛の勝」から、現師匠の1字をもらった「隆の勝」に改名し十両を5場所で通過。自信をもって「実りの秋」を迎える。

先場所は東十両4枚目で13勝2敗。これが自信になってか、秋場所の抱負を「勝ち越しはもちろん、三賞を狙いたい」と意気込む。年齢が近く、出稽古を積みライバル視する阿武咲(22=阿武松)、阿炎(24=錣山)も、新入幕で三賞を受賞し、その後のジャンプアップへとつなげた。そんなことも意識しての目標設定。押し相撲に磨きをかけ、怖いもの知らずで幕内の世界に飛び込む。

【渡辺佳彦】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)