春場所(13日初日、エディオンアリーナ大阪)が約1週間後に迫った。最大の焦点は新大関の御嶽海(29=出羽海)になりそうだが、かど番からの巻き返しを期す2大関の奮起にも期待したい。大関陣3人ともに、初場所後には新型コロナウイルスに感染。調整遅れも心配される中で、場所前の取材から3人の現状をまとめた。

御嶽海は、とにかく前向きだった。初場所後の1月31日に新型コロナウイルス感染が判明。39度の発熱症状もあり、10日間の療養期間で170キロ前後だった体重も164キロまで落ちたというが、場所前の取材対応で悲愴(ひそう)感を一切漂わせなかった。

「逆に場所後の1週間は(取材対応などで)バタバタしていたので、休みを味わえてなかった。プラスに捉えないといけない」。部屋では基礎運動や、若い衆を相手にした一丁押し(立ち合いの当たりを行う稽古)を中心に調整。自然体で“大関デビュー”に備える。

新大関が注目される場所だからこそ“先輩大関”に意地を見せてほしい。貴景勝(25=常盤山)は、昨年秋場所以来5度目のかど番。先場所は右足首の負傷で途中休場したものの、万全ならコンスタントに優勝争いに絡む実力があるのは、ファンの誰もが認めるところ。

師匠の常盤山親方(元小結隆三杉)によると、貴景勝はコロナ感染から回復して黙々と稽古に励んでいるという。10日に大阪入りする予定で、直前まで都内の部屋で調整を続ける見通し。今月1日には関取衆と相撲を取る稽古を再開したといい、師匠は「自分のやることをしっかりやっているので大丈夫」と信じた。

もう1人のかど番大関で、在位9場所目となる正代(30=時津風)は、コロナ感染による調整遅れの不安を率直に語った。4日での報道陣の電話取材対応では「まだ喉が枯れている感じ」とかすれ声。発熱だけでなく味覚障害もあったという。「塩分とか苦み、酸味、甘みが分かるんですけど、それがバラバラにくるというか。全部合わさって料理の味が決まるじゃないですか。それが単体でくる。珈琲とかは苦いだけで分かるんですけど、いざ料理となると、ちゃんこのだしの香りは分からなかった」。

通常は同部屋の幕内力士、豊山と三番稽古を重ねるが、取材時は幕下を相手にした調整を重ねているという。「ちょっと(調整は)遅れている」と吐露したが「体と相談しながら稽古の強度を上げたい」と、残り約10日間で間に合わせることを誓った。

現在の角界は照ノ富士(30=伊勢ケ浜)が一人横綱として君臨。“綱とりレース”も1つの関心事になる。三者三様の大関陣が、場所の盛り上がりを左右することは間違いなさそうだ。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

貴景勝(2021年11月26日撮影)
貴景勝(2021年11月26日撮影)
正代(2022年1月20日撮影)
正代(2022年1月20日撮影)