「ウクライナの相撲文化を知る私だからこそやれることがある。このまま見過ごすことはしたくない」。ウクライナ相撲連盟JAPAN事務所代表の松江ヴィオレッタさん(37)が、4月に発足した団体の経緯を切実な声で訴えた。7月に米国で行われる世界大会に出場する代表選手たちは、ロシアの軍事侵攻により満足に稽古を積めていない。大分・宇佐市などで事前合宿を行うため今月下旬に来日するにあたり、松江さんはサポートを買って出た。

ウクライナの競技人口は3000人ほどだが、同国初の力士で幕下の獅司(25=入間川)がいる。松江さんは仕事で過去に2回現地を訪れ、相撲連盟名誉会長のセルゲイ氏の教えの下で老若男女幅広い世代が稽古に励む姿を見た。

第2の都市ハリコフは第48代横綱、大鵬の納谷幸喜さんの父親の出身地。日本との縁を感じた。セルゲイ氏が「負けた相手を敬う相撲の考え方を広めたい」と話す言葉にも共感し、JAPAN事務所の旗揚げに協力した。

ロシアの軍事侵攻で隣国に避難した代表選手もいる。稽古を再開できていない人も多い中、世界大会が刻々と迫る。大会に向けてピークに持っていこうとする選手団20人のために、「日本の代理人」という松江さんは仲間とともに準備を急ぐ。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)