WBO世界スーパーフライ級王者・井上尚弥(22=大橋)が12月29日に東京・有明コロシアムで同級1位ワルリト・パレナス(32=フィリピン)と初防衛戦を行うことが決まり、20日に都内で会見を行った。王座を奪取した昨年末の試合で右拳を負傷。1年ぶりのリングで進化を証明するとともに、来年の米国進出にも前向きな姿勢を示した。

 待ちに待った、世界戦発表会見。井上はワクワクした気持ちを抑えるように言った。「1%の不安と99%の楽しみ。前半は自分の動きを確認しながら、あとは倒す方向でいく」。キャリア最長のブランクも、持ち前の強気のボクシングを披露することを約束した。

 昨年末に世界的名手オマール・ナルバエスから2回までに4度のダウンを奪う衝撃的なKO劇で世界を驚かせた。だが、その試合で右拳を負傷。当初は5月にV1戦を計画も、完治を優先し、長期戦線離脱を余儀なくされた。同じく拳の負傷経験があるWBA世界スーパーフェザー級王者内山高志に話を聞くなど回復に努め、9月にようやく全力で打てるまでに戻った。

 ファン期待の米国進出も現実味を帯びてきた。大橋秀行会長は、現地のプロモーターから米国デビューの要請が来ていることを明かした上で「来年には向こうで試合をしたいと思っている」と断言。具体的には、現在米国を主戦場とし、将来的な対戦に注目が集まる無敗の3階級王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)と同じ興行への出場を求められているという。

 井上にとっても、意識する存在だ。「ロマゴンとは勝つか負けるか分からない試合になる。対戦を期待されることは自信になるし、モチベーションにもなる」。だが、同時に強いこだわりも示した。「人気があって呼ばれるのと、ただ試合をするのは違う。判定では人気は出ないし、米国でやるためには倒すことが求められる。そういう意味でも次の試合はかぎになる」と力を込めた。

 今回のV1戦は、対戦相手をランキング1位か2位の選手から選択しての指名試合だったが、陣営は迷いなく1位選手を選んだ。井上も「2位の方が楽だけど、自分はやるなら1位がいいと思っていた」と言い切った。日本ボクシング界の怪物が、再出発の舞台で存在感を示す。【奥山将志】