WBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥(23=大橋)が今日8日、同級1位ダビド・カルモナ(メキシコ)との2度目の防衛戦に臨む。7日は都内で前日計量が行われ、リミットの52・1キロでパス。200グラムオーバーし、再計量でパスした挑戦者を尻目に、完璧な仕上がりを強調した。視察のため来日したWBOフランシスコ・バルカルセル会長にも、世界戦5試合連続KOで存在をアピールする。

 井上は体重超過で慌てるカルモナに一切目をやらず、ゆっくりとスポーツドリンクで渇きを潤わせた。肌つやも良く、コンディションは「過去最高」を強調。技巧派挑戦者との一戦に「戦闘モードに入った。テクニックなら自分も負けない。技術でもしっかりとした差を見せて勝ちたい」。短く決意を語ると、カルモナよりも1時間以上早く、計量会場を後にした。

 12年にデビューし、ここまで9戦全勝(8KO)。史上最速で2階級制覇を果たした「怪物」には、世界からも熱い視線が送られている。この日までにWBOのバルカルセル会長が、井上の試合を視察するために来日。個人的な意見としながらも、早期の米国進出、無敗の3階級王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)との対戦を熱望した。

 バルカルセル会長 井上はライジングスターだ。衝撃的なパンチ力を持ち、強さは試合を見ればすぐに理解できる。バンタム級、スーパーバンタム級でも王者になれると思うが、個人的にはゴンサレス戦が見たい。米国のテレビ局も興味を持っており、向こうでパッキャオに続く、アジアのスターになってもらいたい。

 ただし、同氏は今後の飛躍のため、今回のカルモナ戦が大きな試金石になるとも付け加えた。ガードを固め、足を使ってくるテクニシャンとあり、攻略は容易ではない。「スタイル的にも厳しい試合になると思う。世界のトップに立つための良いテストになる」と期待を込めた。

 KOで王座を守れば、具志堅用高氏の世界戦6連続KOの日本記録にも王手をかける。これまで「自然体」を強調してきた井上も、試合を翌日に控え、言葉に熱を込めた。「最終的にはKO決着したい」。再び世界を驚かす準備は出来ている。【奥山将志】

 ◆ローマン・ゴンサレス 1987年6月17日、ニカラグア・マナグア出身。08年にWBAミニマム級、10年に同ライトフライ級、14年にWBCフライ級王座を獲得し、3階級制覇を達成。プロ戦績は45戦全勝(38KO)。愛称「ロマゴン」。身長160センチの右ボクサーファイター。

 ◆WBO(世界ボクシング機構) WBAから分裂する形で、1988年に設立された。本部はプエルトリコ・サンフアンにある。日本ボクシングコミッション(JBC)は、当初は承認していなかったが、90年代にデラホーヤ、その後もパッキャオらの有名選手が王座を保持し、世界的にも地位を確立したことから、2013年4月1日に加盟した。現在、JBCが承認しているのはWBC(世界ボクシング評議会)、WBA(世界ボクシング協会)、IBF(国際ボクシング連盟)を加えた4団体。