20日に日本人初の13戦全勝全KOで世界王座を狙うボクシングWBC世界フライ級1位比嘉大吾(白井・具志堅スポーツ)の師匠、具志堅用高会長(61)が王者陣営に“先制パンチ”を見舞った。16日に東京・新宿区の帝拳ジムで行われた同級王者エルナンデス(メキシコ)の公開練習を視察。練習前の会見で最前列に陣取り、減量状況などの質問を連発する「陽動作戦」を仕掛けた。

 練習前の会見で、いすに座った具志堅会長は前傾姿勢を取っていた。報道陣との質疑応答を終えたエルナンデスに矢継ぎ早に質問。「試合でダウンした経験は?」「うそでもいいけど今の体重は?」。面食らった王者陣営を眺めながら、不敵な笑みを浮かべた。

 関係者を通じ、エルナンデス陣営には具志堅会長が世界王座13回防衛の日本記録を持つ元世界王者で、比嘉の所属ジム会長と紹介された。エルナンデスを指導する元世界王者ブストス・トレーナーから「スパイに来たのですか」と強烈なあいさつを受けると「練習を見に来た」と“逆襲”。さらに「ようこそ」と歓迎の言葉を聞くと「ようこう(用高)、ようこそ」と余裕の表情で対応した。

 エルナンデスの練習がミット打ちなど10分程度で終わると「スパーリングを見に来た。やってよ」と執ようにおねだり。王者陣営がジムを離れる前には「明日、ジムワークやる?」と食いついた。お目当てのスパーリングがチェックできなかったものの「ハートは弱い感じするよ」とズバリ指摘。2年前に弟子の江藤光喜が挑戦した元WBC世界スーパーフライ級王者クアドラスと比較し「スピードで落ちる」と、既に実力を見極めた様子だった。

 比嘉はこの日、減量が順調のために静養した。その弟子に代わり、現役時代に「カンムリワシ」と呼ばれた具志堅会長が鋭い眼力で「先制パンチ」。同じ21歳での世界王座奪取へ力強い援護射撃だった。【藤中栄二】

 ◆比嘉大吾(ひが・だいご)1995年(平7)8月9日、沖縄・浦添市生まれ。中学までは野球少年で、テレビで具志堅会長の現役時代の映像を見て転向。宮古工で競技を始めた。14年6月にプロデビュー。15年にタイでWBCユース王座決定戦で王座初奪取。16年7月に東洋太平洋王座も奪取。家族は両親と兄。160センチの右ファイター。