【ロサンゼルス14日(日本時間15日)=阿部健吾】ボクシングのWBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦は15日(日本時間16日)にゴングが鳴る。元王者三浦隆司(33=帝拳)は試合会場のザ・フォーラムで前日計量に臨み、王者ミゲル・ベルチェルト(25=メキシコ)とともに58・6キロでパスした。米国で初のメインカード。試合に向けて秋田・金足農高の恩師からはボクシング部のジャージーが届いた。最高峰の舞台を夢見た初心を胸に、王座奪還に挑む。

 「129・2パウンド(58・6キロ)!」。司会者から計量をパスする数字が叫ばれると、三浦は体重計から降りて遠方を見つめ拳を掲げた。視線の先から響いていた「三浦! 三浦!」の声。観客を入れての公開計量に、故郷の秋田県三種町から11人の応援団が駆けつけた。「心強いです」。直後のフェースオフは約10秒間。先に視線を外したのは王者ベルチェルトだった。「折れないのが自分のポリシー」。声援を受けては、当然負けられなかった。

 田園風景が広がるのどかな三種町。ボクシングを始め、友人と遊ばずにひたすらグローブを打ち続けた金足農高時代。夢は米国でのビッグマッチだった。名門校ではなかったが、1人真剣に思い描いていた。その原点を思い起こさせてくれた一品があった。

 試合決定後、恩師の宮腰先生から送られたのは、ボクシング部のジャージーだった。デザインは当時と異なるが、背中の「拳闘道」の文字は同じ。「初心に戻って、という気持ち。ここまできたんだなと。あの時代から米国にこられて不思議で」。静かに高ぶった。

 応援は故郷からだけではない。計量の壇上には、帝拳プロモーション所属の元4階級王者ゴンサレスがともに上がった。ミット打ちなどで技術の助言を受けた間柄。米国での人気は抜群で、会場での試合経験もある。「すごく心強い。パワーをもらえている」。昨夏に沖縄合宿をともにした3階級王者長谷川穂積さんは単身やってきた。「頑張れ」の一言が背中を押す。

 5度目の防衛戦で王座陥落したのは15年11月、同じ米国だった。その時より注目を浴び、より大きな舞台に。皆に支えられ、あこがれたリングに立つ。思いは1つ。「必ず勝ちます。なんとしてもベルトを取り返したい」。