WBO世界スーパーウエルター級6位亀海喜寛(34=帝拳)が元4階級制覇王者で同級1位ミゲル・コット(36=プエルトリコ)に0-3(108-120、110-118、109-119)の判定で敗れ、初挑戦での世界タイトル獲得を逃した。

 同級では81年の三原正以来36年ぶり3人目の王座獲得(暫定のぞく)、米国での世界タイトル獲得も三原以来3人目という記録がかかっていた。

 試合後には「(相手が)レジェンドと言えども、勝負の一戦に変わりはなかった。ただ、残念の一言です」と目元を青く腫らして肩を落とした。世界でも5本の指に入るスーパースターに対し、初回から作戦通りの動きを貫いた。前に圧力をかけて、時には小走りで追い詰め、手数を出し続けるのが亀海スタイル。「3度くらいは確実に効いたのはあったのは分かってけど、詰め切れなかった」。誤算は両腕が動かなかったこと。「乳酸がたまってしまい、ショートのパンチが打てなくなった」。晴れ舞台にアドレナリンも出て、普段のパワー以上に打ち込んだことで、普段にはない症状が4回ころから出たという。距離を詰めてから、執拗(しつよう)にパンチを見舞うスタイルにブレーキがかかってしまい、「詰め切れなかった」。

 コットの老練なうまさもあった。距離を詰められても、亀海の打ち終わりに連打をかぶせる。角度の違う多彩なボディー、アッパーを放ったかと思うと、深追いはせずに足でさばいた。巨額のファイトマネーを稼いできた36歳は、この試合を含めて残り2試合での引退を決めている。亀海を無理に倒そうとはせず、しっかりとポイントを稼いで試合を終わらせた。

 亀海は11年から米国での挑戦を始め、これが9戦目だった。激しいファイトスタイルで本場のファン、関係者の心をつかみ、ひのき舞台に駆け上がった。「一番大きなチャンスを逃してしまった」と落胆したが、この日の戦いに関係者の評判は悪くなかったという。中継局のHBOの上層部からは「またチャンスを作る」と約束もされた。逃がした魚は大きいが、まだ先に道は残された。