プロレスラー大仁田厚が7回目の…そして最後の引退を決意し、31日に東京・後楽園ホールで開催する「さよなら大仁田、さよなら電流爆破 大仁田厚ファイナルツアー」のマットに立つ。全日本プロレスに入門し、1974年(昭49)4月14日に佐藤昭雄戦でデビューした思い出の場所で、藤田和之(46)と6人タッグマッチを行う。レスラー人生43年に幕を下ろす大仁田が、還暦を迎え、引退する前に、改めて引退と自身の今後について余すところなく語った。

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 大仁田に、本当に引退するのかとたずねると、目を潤ませながら語り出した。

 大仁田 プロレス、辞めるんだけど…プロレス、やりたいね。やりたいよ。今を生きたいんだよ…でも、やらない。プロレスは、プロだからプロレスリング。お金を取って、プロのリングに立つことは、絶対にあり得ない。プロと名が付く以上、ある程度の水準でやらないといけない…それは不可能。例えば、老人ホームなどで「ノーギャラでいいからやって下さい」と言われたら、やるかもしれない。お年寄りや孤児のために、お金を取らない無料イベント、チャリティーの場で、レスリングをやるのはあるかも知れない。プロレスに、フィクサーみたいに関わる可能性は否定しないよ。

 引退後、やりたいことはあるのだろうか?

 大仁田 昔はね、漁師になりたかった。アフリカを見たいなとか、いろいろあったけれど…俺は日本の国が好きだし、日本民族が好きだし。田舎を、もっと活性化させたい。子どもたちや、じいちゃん、ばあちゃんがニコニコ出来る、国造りはしたいね。自然学校の設立、自然を体感できる設備を作っていかなきゃダメ。木登りが危ないって言っていないで、体感させないとダメ。

 大仁田は2001年(平13)7月の参院選に、自民党の公認を受けて比例区で出馬。「小泉チルドレン」の1人として約46万票を獲得して当選した。その後、05年に郵政民営化関連法案の採択を棄権し、07年の参院選には出馬せず政界引退を表明した。参院議員になった動機は、自然学校を作り、次の世代を担う子どもたちを育成することだった。

 大仁田 日本を変えられる…変えなきゃいけないと思ったんです。自然学校を設立したかった。次の世代を支える子どもを育てることが、重要だと思っていたから。子どもたちに、自然体験とか、いろいろなことを感じさせ、自分というものをきちんと確立させる教育が必要だから。

 政界への復帰はあるのだろうか?

 大仁田 国政は、もういいかなって思っているけれど…政治の部分では、地方自治には興味がある。地方の行政に携わることが出来たら、携わってみたい。過疎化、高齢者、少子化の問題…どうしても東京に一極集中する。市長や県知事が陳情に来て、国会を回って「予算をつけてください」と頭を下げる…こういう制度自体、俺はおかしいと思っているんです。道州制だとか言っていたけれど、官僚が絶対にそのトップの地位に就く。俺らの上の年代の頃の教科書から、ずっと「地方分権」だなんて書いているけれど…いつ、地方分権になったんですか? 何だかんだ言って全部、国が握っている中央集権じゃないですか。置き去りにされている地方もたくさんある。でも(地方自治に挑むなら)勉強しなければいけない。

 今回の衆院選では、小池百合子都知事率いる希望の党の登場で、民進党が分裂した揚げ句、自民党が大勝した。大仁田は今回の衆院選について、こう考える。

 大仁田 時が(進むのが)早いよ。この間、森友と加計学園の問題で政権の支持率が下がったわけじゃないですか? そして民進党が分裂…昔って、もうちょっとゆるやかにきてた気がするんだけど、リズムがアップテンポになって、世の中がハードロックだよね。小池百合子さんが非常にしくじったのは、民進党との合流の際に“踏み絵”をさせたこと。日本人はハブられたり、仲間外れにすることを、ものすごく嫌う民族。俺は自民党に、おきゅうを据えた方がいいと思ったけれど…消去法で行くと(有権者は)希望の党に希望をかけられなかった。今後、野党がどういうふうに変化していくか…。僕は反対する人がいないとダメだと思う。あまり政権が長いと、内部から腐るじゃないですか? 俺は石破茂さんが好き。地方のことをちゃんと考え、活性化させようと一生懸命、頑張っているから。今まで1番、地元の話を聞いたり全国の人の話を聞いたのは、石破さんじゃないですか。だから石破さんが12年の自民党総裁選で安倍晋三首相と戦った時、地方票で勝ったわけじゃないですか。地方が元気を出さないと、日本は元気にならない。でも、安倍さんは都会寄り。それに自民党は、2回生の悪いところのツケを全く払っていない…そのツケが回ってくるんじゃないかと思いますけど。

 東京五輪にも関心があるという。東京都と2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会が4日、トライアスロンなどの競技会場となるお台場海浜公園で7月から9月にかけて行った水質調査で、国際競技団体が定める基準値の最大約21倍の大腸菌が検出されたと発表した。大雨の影響で処理能力を超えた下水処理施設から、海に放出された汚水が原因とみられ、下水処理施設の整備や水中スクリーンを設置する実験を行うとした。大仁田は8月10日に分身のグレート・ニタがお台場海浜公園の海から出現し、海水を何度も飲んだ数日後、自身の体調が悪化したと告白した。

 大仁田 具合、悪くなったよ。まさか具合が悪くなると思わないから、ニタは口に含んだ。そうしたら、こっちも、おなかの調子だけじゃなく…気持ちが悪く、はきそうになった。会場、そこしかないの? ちょっと、違うところにした方がいいね。競技中の選手が、どれだけ、水を飲むか分からないけれど…大概、具合悪くならない俺が、具合悪くなったんだから。塩水だしさ、殺菌効果があるって思っているから…まさか、具合悪くなるって思わなかったよ。

 そして、最後に言った。

 大仁田 あと10年は絶対…ヘタしたら15年は働こうと思っているよ。俺は大仁田厚として生きたいんだ。でも…プロのレスラーとしてリングに上がることは絶対にない。神に誓って、やらない。

 “邪道”大仁田は新たな人生への第1歩を踏み出す。【村上幸将】