ボクシング世界3階級を制したWBA世界フライ級王者の井岡一翔(28=井岡)が王座を返上したと9日、父の井岡一法会長(50)が大阪市内のジムで発表した。同級1位アルテム・ダラキアン(30=ウクライナ)と12月31日に6度目の防衛戦を行う予定だったが、同会長は「準備が間に合わないので、いったん(ベルトを)返上しようということになった」と説明。11年から6年連続で行ってきた“大みそかのファイト”は途切れる。

 一翔は4月23日に5度目の防衛に成功し、元WBA世界ライトフライ級王者具志堅用高の「世界戦14勝」の日本記録に並んだ。その後、5月17日に歌手の谷村奈南と結婚し、9月にハワイで挙式。現在は都内で暮らしている。夏場以降話し合いを重ねてきたという同会長は「新婚やし、いろいろ生活の準備があるようです。プライベートのこと、夫婦のことに口は出せない」と、一翔が私生活に時間を割いていることを明かした。

 一翔も28歳。ブランクが長引けば選手生命に影響を及ぼす。同会長は「2つに1つやから。本人にスイッチが入れば、3カ月あれば試合の準備はできる。モチベーションがないなら、引退せな仕方がない。仮に身を引くなら、引退式もやる」と引退の可能性もにおわせた。その一方で「でも、やる気はあると思いますよ。週に3、4日走ってると言うてるし、体重もキープしてる。やる気がなければ、しませんよ」と弟子であり息子の“復活”に期待をかけた。【加藤裕一】

 ◆井岡一翔(いおか・かずと)1989年(平元)3月24日、大阪・堺市生まれ。元世界2階級王者井岡弘樹氏のおい。興国で高校6冠。08年に東農大を中退しプロ転向。11年2月に当時国内最速の7戦目で世界王座獲得。12年6月にWBA、WBCミニマム級王座統一。同12月にWBA世界ライトフライ級王者となり2階級制覇。15年4月に同フライ級王座も獲得し、世界最速18戦目で3階級制覇。身長165センチの右ボクサーファイター。22勝(13KO)1敗。