ボクシングWBO世界スーパーフェザー級王者伊藤雅雪(27=伴流)が3日、37年ぶりに米国で王座奪取から帰国した。

 7月28日にクリストファー・ディアス(23=プエルトリコ)に、王座決定戦で判定も4回にダウンを奪う快勝だった。伊藤は真新しいベルトを肩に終始笑みが絶えず。「実感はあまりない。まだフワフワしてるが、支えてくれた周りが喜んでいるのがうれしい。あの興奮は一生忘れない」と話した。

 前日計量後に空港へ妻子、両親、兄姉ら一族を出迎えに行った。「乗り継ぎできるか、ちゃんと来られるか3日前から心配で」と、空港内の経路を動画で送ったほど。到着後も待機が長引き、結局から3時間半待ちした。本来なら体を休めるべき時だったが「食事はすんでいたし、逆にリラックスできた。いつも試合前夜から家族と過ごすので」。

 当日の昼以降はホテルで1人になった。「倒されるかとか怖かった。ここまでやってきた思いもあった」と初めて涙がこぼれたという。逆にこの涙で気持ちが吹っ切れ、「あとは楽しむしかない」とリングに上がったと振り返った。

 リングは狭く「武器は足なんで、前で戦う不安もあった」。米国キャンプでは苦手だったが、接近戦を徹底して練習してきた。リングの狭さに開き直り、最後まで前へ攻め続けることができた。

 試合2日後には家族らとディズニーランドなどを観光したが、伊藤がガイドと運転手にベビーカー押しまでした。「暑さと筋肉痛もあった。試合より一番疲れた」と笑った。

 同級は内山、三浦と強打の世界王者がいた。「あこがれで肩を並べことなんて考えられない。でも、仕留めきる力をつけ、もっと極めて近づきたい」と成長を期す。初防衛戦はまったく白紙だが「本音は日本で恩返しもしたいが、米国でも与えられた試合をして、強くなりたい」。日本連盟の山根会長が大騒動には「話を持っていかれてしまって…。寂しい思いだけです」と苦笑した。