【ラスベガス(米ネバダ州)17日(日本時間18日)=阿部健吾】ボクシングのWBA世界ミドル級王者村田諒太(32=帝拳)が「原点」に奮い立った。2度目の防衛戦を20日(同21日)に控え、ラスベガスのトップランク社のジムで公開練習。プロデビュー前後に単身合宿を繰り返し本場の壁も感じた場所で、気持ちを新たにした。一瞬の初対面を果たした対戦相手の同級3位ロブ・ブラント(米国)陣営は、村田を良く知ると豪語する元世界王者の参謀が攻略に自信を見せた。

米メディアの女性リポーターからインタビューを受けていた村田が視線を上げて、周囲を見渡した。

「感慨深いですね。ここでスパー(リングを)して…。いろいろ思い出しますね」

公開練習の会場は、契約する米プロモート大手社のトップランクが運営するジム。レンガ調の壁、名勝負のポスター、高い天井。「デビュー前にここで練習して、夢に描いていたことの1つが実現できていることをうれしく思う」。ベルトを携えての“凱旋(がいせん)”が、また心を高ぶらせた。

13年8月のデビュー前。12年ロンドン五輪金メダリストながら、まだプロの世界では無名だった頃。数々の世界王者を輩出した本場のジムで単身合宿しながら、「いつか自分も」と誓った。その後も度々訪れては、高い壁を感じ、試行錯誤に引退も考えた場所。艱難(かんなん)辛苦が頭を巡ったのだろう。そして、変わらぬその光景が、立場が変わった自分へのカンフル剤となった。

思いをぶつける相手、ブラントとは一瞬だけ目を合わせた。練習の入れ替わりで対面し、「思ったより肩幅もない」と体格差を感じた。交渉過程の非礼に珍しく怒りをみせてきたが、この日は柔らかな笑み。海外メディアからはWBAスーパー、WBC王者アルバレスと試合の可能性を問われたが、英語で「without mexican beef(メキシコの牛肉がなければ)」。禁止薬物陽性反応をメキシコで食べた牛肉のためと主張してきた対抗王者へ、だめ出しジョークで笑いも取った。

言動に漂うその自信と確信。「心身共に良い状態です」。原点から力をもらい、最後の仕上げに入った。