ボクシングのWBA世界ミドル級王者村田諒太(32=帝拳)が、分岐点となる聖地での世界戦を迎える。10月20日(日本時間21日)に同級3位ロブ・ブラント(27=米国)とボクシングのメッカである米ラスベガスのパークシアターで迎えるV2戦は、今後のビッグマッチにつなげるために明確な結果が求められる。13日に現地入り後、「非常に光栄なこと。良い試合をみなさんに見せたい。(ブラントは)良い選手だと思ってます。指名挑戦者ですし。その選手に勝つことに意味がある」と述べた。必要なのは判定勝ちではない。倒して勝つことが「意味」を持つ。

ブラントは17歳でボクシングを始め、アマチュアで全米王者となっている。ミドル級戦線では新鋭ながら、ハンドスピードの速さと手数の多さでKO勝利を重ねてきた。今回は初の世界戦に合わせて、拠点のテキサス州から2カ月前にラスベガスに入った。4カ月前からは元WBAライトヘビー級王者で世界王者も育ててきたエディ・ムスタファ氏(66)に師事し、向上を目指してきた。17日の練習公開では「判定までいって勝ちたい」とフルラウンドの作戦を口にしており、その必勝プランは明確だと言えそうだ。

村田は従来通り、ガードを固めて前進、プレッシャーをかけ続けてKOを狙うことになる。足を使ってジャブを当ててくるだろう相手に対し、勝負どころを見極めて倒しにいく。「非常にいいトレーニングを積めている。練習したことを出して、その結果が良いものになると信じている。自信を持ってリングに上がるだけです」と決意を述べる。

本場でのアピールに成功すれば、その先に明確なビッグマッチが待つ。契約する米大手プロモーターのトップランク社のボブ・アラム氏は「来年の1月から3月までにゴロフキンと試合をしたい」と青写真を描く。9月に王座陥落したが、いまだに評価は高い元3団体統一王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)を標的に、ラスベガスか東京ドームでの一大イベントを視野に入れる。

ラスベガスで防衛に成功した日本人王者は過去2人(西岡利晃、亀田和毅)しかいない。村田は日本人としては初のミドル級での防衛を4月に成功させ、すでに前人未到の領域を歩んでいるが、また新たな金字塔に挑むことになる。しかも、求められるのは内容。選手層の厚さ随一のミドル級、しかも指名挑戦者相手という高いハードルをクリアすれば、また一段階上のステージでの戦いに進むことになる。