17年12月の世界戦で薬物検査違反を指摘され、1年間のライセンス停止処分を受けた前日本スーパーフェザー級王者尾川堅一(31=帝拳)が復帰戦勝利で感謝の涙を流した。

フィリピン・ライト級王者ロルダン・アルデア(24)を3-0の判定で下し、1年2カ月ぶりのリングで安堵(あんど)の表情を浮かべた。KOは逃したものの、キレのある右ストレートを何度も打ち込んでの快勝劇。「復帰させてもらってありがとうございます」と感謝の言葉を口にした。

梓夫人が縫ったスパンコールで輝く「CRUSHRIGHT」の文字の入ったTシャツで入場。同夫人、長男豹(ひょう)くん(5)、次男亜陸(あり)くん(4)、三男皇(おう)くん(3)が見守る中で10回を戦い抜いた。「子供の存在は大きい。9、10回は子供を思って戦った。もっと強いパパをみせたいと思う」と家族の支えに感謝した。

さらにジムの先輩、後輩たち、500人以上集まった応援団の声援。激励は試合中から耳に入った。「粟生(隆寛)さん、村田(諒太)さんのゲキがあった。後輩たちから『尾川さん、頑張れ』と言われ、強い先輩でありたいです」と強調。満員で埋め尽くされた後楽園ホールからの大歓声に「期待を感じました。変なヤジとかあるかと思ったけれど。本当にうれしかった」と両目を赤くした。

17年12月にIBF世界同級王座決定戦で判定勝利したはずが、18年に入って薬物違反で無効試合とされた。同年6月からジムワークを許され、昨年12月にライセンス停止が解除された。ようやく踏み出せた第1歩。帝拳ジムの浜田剛史代表は「フルラウンドをやれて実戦感覚が戻ったのでは。次からが本番なんだと思う」とエールを送った。前日に31歳となり「時間もあまり残されていない」と強調した尾川は「今年、勝負をかけたいと思います」と何度も口にした。感謝の思いを胸に秘め、再び世界王座奪取へ突き進む構えだ。