脳外科医のリングドクター田中将大(まさひろ、29=川崎新田)が、プロボクサーとして衝撃デビューした。

最初の右フックで瀬下雄介(27=協栄)をダウンさせ、さらに連打で再びダウンを奪うとレフェリーストップ。1回25秒TKOの秒殺勝利を飾った。選手に寄り添えるリングドクターを目指す過去に例のない兼業ボクサー。自らが実験台となり、まだまだリングに上がることも宣言した。

田中はゴングと同時にダッシュ。開始5秒で右フックを打ち込み、ダウンを奪った。立ち上がってきたがさらに連打して左フックで仕留めた。相手もデビュー戦に、先に一発を当てる作戦が的中した。「最高、もうちょっと楽しみたかった」と言う衝撃のプロデビューとなった。

勝利後がリングドクターらしかった。相手コーナーに駆け寄って「気持ち悪くないですか?」と診察。「脳振とう1度でした」との診断結果だった。医務室に向かう際にも「自分で診察すれば」の声が飛んだ。経験を生かした秒殺でもあった。「デビュー戦は硬くなり、足首とかも硬い。これまでの観察が役立った」と冷静に分析していた。

15年にリングドクターとなり「選手の気持ちを分かり、助けたい」と17年にプロのライセンスを取得した。選手となって、入場券がファイトマネーになるシステムを知った。「入場する時は幸せに包まれた。応援してくれた人に感謝しかない」と頭を下げた。

新田会長は「ドクターとしても日本の宝。本当はやらせたくない。複雑」と話した。3月には非常勤から常勤できる病院に移るが、現役続行が条件だった。「楽しかったのでまだ続けます」と二刀流を続行する。【河合香】

◆眼科医でリングドクターも務めるうみ夫人 無事に帰ってきてくれたのが何より。やはり心配でした。いいものを見せてもらいましたが、相手が心配になりました。まだ続けるんですか? 困りました。いい節目の誕生日と結婚記念日にはなりました。