ボクシングのWBA世界バンタム級王者井上尚弥(25=大橋)が階級最強を決めるトーナメントで、2つの「初」に挑む。

5月18日、英スコットランド・グラスゴーでIBF世界同級王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)とのワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)の準決勝に臨むことが12日(日本時間13日)、WBSS公式サイトで発表された。井上は英国初上陸、そして団体統一戦も初めてとなる。

会場はグラスゴーの多目的アリーナ、SSEハイドロ(収容人数1万3000人)となる。WBAスーパー王者ライアン・バーネット(英国)-元5階級制覇王者ノニト・ドネア(フィリピン)戦のWBSS1回戦が開催されたアリーナだ。英国のボクシング熱の高まりを知っている井上は「熱狂的なファンの前でボクシングすることが待ち切れない。『モンスター』パフォーマンスを見せます」とWBSS公式サイトを通じたコメントで喜びを表現した。

7度防衛に成功したWBO世界スーパーフライ級王者時代から熱望していた団体統一戦も実現する。今年の「目標はWBSS優勝、統一王者」と掲げており、ロドリゲスに勝てば、1つの目標に到達する。その先に日本人初の3団体統一王者になるWBSS優勝がある。同公式サイトを通じ、井上は「自分は(優勝で得られる)アリ・トロフィーを獲得し、世界一のバンタム級王者であることを証明することが運命」との意気込みをコメントした。

10月7日、WBSS1回戦でフアンカルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)を70秒KOで撃破した。日本人の世界戦最短タイムでのKO勝利を挙げるインパクトを残してから7カ月後の準決勝となった。その間、米メディアでWBSS資金面の問題も報じられ、3月の米国開催と言われていた準決勝はずれ込む形となった。右拳を手術した14年12月~15年12月の1年間に続く試合間隔の長さとなったものの、井上は「相手も決まっていて、あとは日程だけだったので、モヤモヤしたものとか、そういう気持ちはないです」と平常心を貫いていた。

1月に入ってからは東洋太平洋スーパーバンタム級王者勅使河原弘晶、元日本同級王者久我勇作ら1階級上の実力者とのスパーリングを消化。同月下旬から10日間の日程で、メキシコ人練習パートナー2人を招請し、ロドリゲス対策も練ってきた。万全の準備をするため、恒例となる静岡・熱海での走り込み合宿も、今回は15年8月以来2度目となるグアムで行う。父真吾トレーナーも「寒いと故障しやすいので暖かい場所が良いと判断した」との意図を明かした。帰国後は再びスパーリングを再開する予定。英国初勝利、自身初の2団体統一王者という「2つの初」を目指し、井上は高いモチベーションを保って調整を続ける。【藤中栄二】