“デスマッチのカリスマ”こと葛西純(44)が、キングオブフリーダムワールド(KFC)選手権で、挑戦者の藤田ミノル(41)を下し、3度目の防衛に成功。令和初の後楽園ホールプロレス興行を血と刺激で染めた。

葛西が藤田の全身全霊の挑戦を受けとめた。藤田は葛西の大日本プロレス時代の先輩。現在はフリーで活動し、フリーダムズの同ユニット「UNCHAIN」の仲間だが、刺激を求める葛西のために今回挑戦者に名乗り出た。4月の前哨戦では2年間伸ばし続けた髪を切り、覚悟を示していた。

その藤田の思いを投影するように、試合は刺激たっぷりの内容となった。あらかじめ設置された十字架カミソリボードに互いの額をぶつけ合う。葛西が持ち込んだ植木鉢を藤田が破壊し、その上に互いに体をたたきつける。藤田が持参したチーズのおろし金やスタンガンも刺激をさらに増幅させた。なかなかくたばらない2人の攻防に会場が沸騰する中、最後は葛西がリングに寝かせたカミソリボードに藤田をリバースタイガードライバーで沈め、3カウントを奪った。

葛西は「藤田先輩!きょうはとびきりの刺激をありがとうございました」とリング上で土下座した。一方の藤田は葛西の腰にベルトを巻いて負けを認めた上で、葛西とリングサイドにいるもう1人のデスマッチスター竹田誠志を名指しし、「俺はお前らに負けないナニモノかに絶対になってやる」と宣言。会場を沸かせた。

バックステージでは葛西が藤田を思い、感極まって涙した。「いろんなものを得た葛西純だったけど、1番大事な、戦いにおける刺激を失って、それに気付いてくれたのがいろんなものを失った藤田ミノル先輩だった」。葛西はデスマッチのカリスマとして人気、実力を備え、家庭も円満。「いろんなものを得る」一方で選手として煮え切らない思いもあった。その中で離婚などの経験を経て、フリーとして苦闘する藤田の姿勢が葛西の心を打った。「あの人に残されたのは2年間こだわり続けたへなちょこな髪形だけだった。あの髪形を捨ててまでも、オレっちに挑戦してくれた。すごい、オレっちはうれしかったです」。

2人のデスマッチレスラーが人生を投影した熱い試合を見せ、聖地の新たなスタートを飾った。