WBA世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)が2回1分19秒TKOでIBF世界同級王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)を下し、WBSS決勝進出を決めた。

1回にロドリゲスのかけたプレッシャーで後方に下がってロープを背にする場面があったものの、2回にはカウンターの左フックから左ボディーなどで計3度のダウンを奪ってレフェリーストップに追い詰めた。1回と2回にある1分間のインターバルで、井上はスタイルを修正していた。

自らの力みで思うように動けず、さらにIBF王者の前に出る圧力で1回の井上はロープ際に追い込まれた。過去の世界戦でも珍しいシーンだったが「(プレッシャーを)かけてくるなと思ったので、自分は引きながら引きながら展開を作って」。1回終了後は「試合が長引く」と頭をよぎったものの「気持ちの余裕はありましたよ」。コーナーで父真吾トレーナーに「リラックスして柔らかく」との指摘を受けると、体全体から力みが消えていた。

すると2回、井上は少し重心を低くする立ち方に変えた。「予想よりもプレッシャーをかけてきたので、勢いづかせないため」。少し前かがみで体を出すことでのけぞることはなくなった。「自分の重心を抑え、(ロドリゲスの重圧を)抑える。自分の感覚ですね」。必然的に危険な接近戦になったが、井上の独壇場になった。カウンターの左フックが命中。面白いようにボディーに両拳をねじ込ませ「いいパンチが当たった」と振り返った。

たった1分間で修正できる井上のボクシング感覚がモンスターと言われる所以だろう。師匠の大橋秀行会長は「2ラウンドでがらっと変わった。あっぱれです。1ラウンドが終わった時に判定もあるかなと思ったから。予想を上回りました」とうなっていた。