ボクシング前WBA世界ミドル級王者村田諒太(33=帝拳)が「名伯楽」に難敵王者の攻略法を伝授された。7月12日、エディオンアリーナ大阪で、昨年10月に判定負けを喫した現王者ロブ・ブラント(28=米国)との再戦を控え、13日に都内の所属ジムで練習を公開。84年ロサンゼルス、88年ソウル両五輪で米国代表を指導し、計29人の世界王者を育てた名トレーナー、ケニー・アダムス氏(78)に戦術面の助言を受けた。

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78歳の名指導者の「頭脳」が援軍となった。村田が「刺激として考え方、見方が違うのでいい」と見つめた先には米国人トレーナー、アダムス氏がいた。9日に来日、10日から約1週間の日程で、ジムワークの視察を受けている。約30年間、米軍に所属し、厳しい規律訓練スタイル。2度スパーリングも見てもらい、村田は「軍隊のような感じ」と細かい助言を受けた。

現在も5階級制覇王者のWBA世界バンタム級スーパー王者ドネア(フィリピン)を指導する同氏は、帝拳ジムの本田会長と旧知の関係にあり、今回の招請が実現した。昨年10月の村田-ブラント戦を動画チェックしたという同氏は「相手を待ちすぎた。村田の持ち味の右ストレートが打てていなかった。ブラントはトリッキーに動くので、プレッシャーをかけて1、2、3と連打していかなければ」と指摘した。

さらに「私は元軍人。相手攻撃を消す動きをして、自らが打つことを軍で覚えた。ブラントに攻撃させない動きがある」とボディー攻撃でブラントの体力を削るプランを公開。詳細は明かさなかったが「最初に自分から攻撃し、最後も自分が攻撃しなければいけない」と作戦の一端を示した。本田会長は「1つの意見として聞いている。先入観なく見てもらえている」と戦略面の充実ぶりを口にした。再戦まで残り約1カ月。村田は「今はボクシングの感じがいい」との手応えを胸にブラント攻略法を仕上げていく。【藤中栄二】

◆ケニー・アダムス 1940年9月25日生まれ、米ミズーリ州スプリングフィールド出身。6歳の時にボクシングを始め、12歳でアマチュアの試合に出場し、200戦以上の試合を経験。トレーナー転身後は米国のアマボクシングに初めて筋力トレを導入。84年ロサンゼルス五輪で米国代表コーチを務め、金9個、銀1個、銅1個の獲得に貢献。88年ソウル五輪では監督に就任し、ロイ・ジョーンズJr.(元4階級制覇王者)らを擁して金3個、銀2個、銅2個を獲得。ベトナムを含めて約30年間、米陸軍に所属していた。