WBA世界ライトフライ級スーパー王者京口紘人(26=ワタナベ)が、同級10位タナワット・ナコーン(26=タイ)を3-0の判定で下し、初防衛に成功した。昨年大みそかにマカオで2階級制覇を達成。パワーアップした姿でKOを狙ったが、元ムエタイ王者に苦戦を強いられた。

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「ドスッ」。ねじるような左アッパーとボディー。鋭い右ストレート。京口の一発一発に会場がどよめいた。10回にはラッシュで追い詰めたがタナワットは倒れなかった。パワーで上回っているのは明らか。それでもムエタイで培った予測不能の動きで何度もするりとパンチをかわされた。

KO勝利を逃し、リング上で謝り倒した。「めちゃくちゃおもんない試合してすみませんでした。本当に首の皮一枚つながった」。5度も「申し訳ございません」を繰り返した。控室では「思ったよりジャブが伸びてきた。ボディを簡単に当てさせてくれなかった。独特のうまさを感じた」と苦戦の理由を語った。

「4回で倒す」。そう自分にプレッシャーをかけて臨んだ。昨年8月にIBF世界ミニマム級王座を返上。ライトフライ級に上げ、大みそかには同級スーパー王者ヘッキー・ブドラーを10回TKOで破り、2階級制覇を達成。それでも思っていたほどの注目は得られなかった。「あれだけの試合をしても認知されない。5階級制覇ぐらいしないと(世間には)出られないのか…」。存在を認めてもらうため「面白い試合をする」と自分に課していた。

2階級制覇後も休みなくパワーアップに励んできた。5月には約1週間フィリピンへ行き、バンタム級の選手らと計20ラウンドのスパーリングをこなした。ジムでは通常よりひもをきつく締めたパンチングボールを打ち、武器の左ボディーにも磨きをかけた。自信があった分、「しょっぱい試合をした」と悔しさがつのった。陣営は年内あと2戦を予定し、他団体との統一戦も見据える。京口は次のアピールの機会に向け「もっと強くなる」と誓った。

試合前、クボタケことサッカー久保建英(18)と顔が似ていることが注目された。「サッカーは人気スポーツでうらやましい。ボクシングは強いだけじゃだめ」。強くて、魅力的で、誰もが見たくなるボクシング。悔しさを胸に若き王者の追求は続く。【高場泉穂】