王者拳四朗(27=BMB)が、挑戦者の同級1位ジョナサン・タコニン(32=フィリピン)を4回1分0秒TKOで下し、6度目の防衛に成功した。元WBA同級王者具志堅用高の持つ日本記録「13連続防衛」の更新を夢見る京都出身の27歳。7度目の世界戦にして初の地元関西の試合で、現役の国内ジム所属王者で最長の防衛数を更新した。王者は16戦全勝(9KO)。

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リングで互いの体が交錯し、タコニンがよろけて倒れた。拳四朗の右ショート。計算ずくのカウンター。「練習通り。左を空振りさせての右」。4回1分ジャストで決着させた会心の一撃を「抜けたような感じ」と振り返った。

V6を決めた勝利インタビューで絶対王者らしさを見せた。「目標は具志堅さん。まだ半分。スタート地点に立ったぐらい」と言った後で「強い人、どんどん挑戦してきてください!」。リングサイドで観戦したWBAスーパー王者京口に呼びかけるように、笑顔で言い放った。

世界王座連続防衛の日本記録「13」更新へ。夢のシナリオは第2章に入った。「これからは強い相手とやりたい」。京口との統一戦など他団体のベルトに興味がある。V5までは違った。楽に勝てるならと、むしろ弱者を歓迎した。

「ボクサーになってきたんですかね」と自己分析する。ファイトマネーも人気もまだ足りない。左で距離を支配するスタイルに自信を深め、この日は距離の取りづらい左の強打者に完勝。相打ち覚悟で捨て身の32歳を退けた。自信は確信に変わりつつある。

強くなりたいから、姿勢も変わった。V6戦に向け、拠点の東京から日帰りで5度、大阪を訪れた。父の寺地永会長の現役時も担当した篠原茂清トレーナー主宰のジムへ、Tシャツ、短パンで新幹線に乗って訪れ、約2時間鍛えて東京に帰る。篠原トレーナーは「具志堅さんの記録にはあと3年は絶対かかるから、うまくいって30歳。ここからが大事で“落ちてきた”と気づいた時は、遅い。それを分かっている」。3年先を見据え、脈拍数を上げて負荷をかけるメニューをこなし始めた。

地元関西の世界戦は7度目で初めて。「ヤジなかったですか? やったー!」。スマイル・アサシン(笑顔の狙撃手)は、どんどん強くなる。【加藤裕一】

◆国内ジム所属世界王者の6連続防衛 WBA世界ライトフライ級王者田口良一(7連続防衛後の昨年5月20日に陥落)以来15人目で12位タイ。最長記録は元WBAライトフライ級王者具志堅用高の13連続で、2桁以上は12連続の元WBCバンタム級王者山中慎介、11連続のWBAスーパーフェザー級王者内山高志、WBCバンタム級王者長谷川穂積を含め4人だけ。

◆拳四朗(けん・しろう)本名寺地拳四朗で、漫画「北斗の拳」の主人公ケンシロウから命名。1992年(平4)1月6日、京都府城陽市生まれ。東城陽中3年時、高校のスポーツ推薦入学を狙い、ボクシングを開始。奈良朱雀高3年でインターハイ準優勝、関大4年で国体優勝。一時はボートレーサーを志すが、試験に2度失敗。14年8月にプロデビュー。趣味はオシャレ、食べ&飲み歩き。家族は両親、兄。右ボクサーファイター。164センチ。