WBA世界ミドル級王座を奪回した村田諒太(33=帝拳)が初めて長男晴道くん(8)を自らの試合に招待した。アマチュア時代の11年5月に愛息が生まれると、同年10月の世界選手権で初めて銀メダルを獲得。長男の成長とともにオリンピック(五輪)金メダル、プロでの世界王者と快挙を成し遂げてきた。父親の生きざまを見せるため試合会場に呼んだ息子に、温かい手紙を送った。

<村田が送った手紙>

晴道へ

試合会場で初めてパパのボクシングを観戦して、どうだったかな?

また感想を聞かせてね。

最近、パパとよく会話するようになってきたよね。少し前に話したと思うけれど、新約聖書の話で「タラントのたとえ」の話は覚えているかな?

ある主人が、しもべたちの能力に応じて1人に5タラント、もう1人に2タラント、さらに3人目に1タラントのお金を託して、旅に出掛けた話だよ。

5タラントを受け取った者は、それを元手に一生懸命に商売して、さらに5タラントを増やした。2タラントを受け取った者も、頑張って商売に力を入れ、さらに2タラントを増やした。でも、1タラントを受け取った者は、失うことが怖くて地面を掘って1タラントを隠してしまった。一生懸命に働いて増やそうとしなかったんだね。

旅から戻ってきた主人はタラントを2倍にした2人を「忠実なしもべだ」とほめたたえた。でも、1タラントを活用しなかった者には「お前はなまけ者だ」とタラントを取り上げて、10タラントまで増やした者に託してしまった。神さまは与えられた「賜物」をそれぞれどのように使うのかを見ているという話だったよね。

タラントは、持って生まれた人の能力のことだと思うよ。晴道の爺には優しさのタラントがあるよね。やっぱりパパはボクシングになるかな。晴道のタラントは何だろう?

パパは今日、タラントをたくさん使ったと思う。これからもボクシングを頑張るから、これから晴道も自分のタラントを見つけていこうよ。

ずっと見守っているから。

パパより

 ◇  ◇  ◇

◆村田諒太(むらた・りょうた)1986年(昭61)1月12日、奈良市生まれ。伏見中1年で競技開始。南京都高(現京都広学館高)で高校5冠。東洋大で04年全日本選手権ミドル級で優勝など。11年世界選手権銀メダル、12年ロンドン五輪で日本人48年ぶりの金メダルを獲得。13年8月にプロデビューし、17年10月、WBA世界ミドル級王座を獲得し、日本人で初めて五輪金メダリストがプロ世界王者になった。家族は佳子夫人と1男1女。183センチの右ファイター。