ボクシングWBA・IBF世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)が「伝説」への1歩を踏みだす。

7日にさいたまスーパーアリーナで控える5階級制覇王者のWBA同級スーパー王者ノニト・ドネア(36)とのワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)決勝に向け、5日に都内で会見。元世界ヘビー級王者ムハマド・アリの名を冠したアリ・トロフィー獲得への気持ちを高ぶらせた。WBC世界同級王座統一戦に臨む暫定王者井上拓真も正規王者ノルディーヌ・ウバーリと会見に臨んだ。

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会見中、何度も黄金のトロフィーをみつめた。アリ・トロフィーを挟み、井上尚はドネアとにらみ合った。初めて“対面”した階級最強を証明する優勝副賞はサッカーW杯トロフィーも手掛けたイタリアの彫刻家シルビア・ガザニガ氏のデザイン。井上尚は「目の前にしたのは初めて。デザイン的にも素晴らしいです」と感慨深くみつめた。

アリ家公認のWBSS優勝副賞で、昨年は娘ラシエダさんがプレゼンターを務めた。アリについて井上尚は「ちょっと世代も世代なので、そこまで詳しくないのですが」と苦笑い。代わりに井上尚の師匠で元WBA・WBC世界ミニマム級王者大橋秀行会長(54)は「アリはボクシング界を超越し、世界のスポーツ界全体に影響を与えた選手。日本で尚弥はそうなりつつある。いずれアリのようにスポーツ界全体に影響を与える存在になってほしい」と託した。

井上尚の応援のため、ラグビーW杯日本代表のWTB松島幸太朗とともにCTB中村亮土の来場も決定。日の丸戦士たちのバックアップに井上尚は燃える。「日本を代表し、背負うつもりです。自分が勝たなければ誰もここまで上ることはできないだろうと思っている。自分が突破口として優勝したい」。

WBSSプロモーターのカレ・ザワーランド氏は優勝賞金について「7桁になる」と100万ドル(約1億1000万円)近くになると説明。アリ伝説を追うように、モンスターがドネア撃破で1つの歴史を刻むつもりだ。【藤中栄二】