WBA・IBF王者井上尚弥(26=大橋)が、1年かけて戦い抜いた階級最強トーナメントを制した。5階級制覇王者のWBAスーパー王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)とフルラウンドの激闘を展開し、3-0の判定勝利を挙げた。キャリア初の右目カットで視界が遮られながらも11回に左ボディーでダウンを奪取。WBAは3度目の防衛に成功し、スーパー王座を獲得、IBF王座の初防衛にも成功した。米プロモート大手トップランク社との契約も発表され、来春にラスベガスデビューする可能性が高くなった。

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20年から井上尚は米国に本格的に進出することが決まった。WBSS決勝に合わせて来日した米プロモート大手トップランク社トッド・デュボエフ社長が視察。試合後には井上尚らとともに記者会見し「個人的にも井上選手をフォローしてきた。SNSなどもチェックしてきました」と複数年契約を結んだことを発表した。さらに「来年、まず2試合は米国で計画している。年末に日本で計画しています」と具体的なプランまで披露。来年の主戦場が米国になることを明かした。

17年9月、井上尚はWBO世界スーパーフライ級王者として米初上陸を果たした。ニエベスに6回終了TKO勝ちを収め、米デビューを飾っている。以前から井上尚は将来的なラスベガスでの世界戦を希望しているが、今後の交渉次第では、早ければ来春にも「ラスベガスデビュー」を飾る可能性が高くなった。

さらにトップランク社が提携しているプロモート会社にはWBO世界バンタム級王者ゾラニ・テテ(31=南アフリカ)も契約選手に入っている。今回もWBSSに参戦しながら、米国で予定されていたドネアとの準決勝直前に肩故障を訴えて棄権していた。そのテテ陣営からも統一戦のラブコールを送られている。さらに井上尚はこの日、WBC世界バンタム級王座統一戦で暫定王者だった弟拓真に勝ったウバーリの名を挙げ「かたきを取りたいです。WBC王者ウバーリとの統一戦をボクはやりたい」ともリングで口にした。

テテ、ウバーリ、いずれにしても来春、ラスベガスで日本人初となる3団体統一戦が組まれる可能性は十分。勝てば日本人初となる3団体統一王者にもなる。WBSS制覇を果たした井上尚の来年は夢が広がるばかりだ。【藤中栄二】