ボクシング2団体統一バンタム級王者井上尚弥のいとこで日本スーパーライト級王者の井上浩樹(27=大橋)が「気負い厳禁」でアジアのベルト獲得を狙う。 WBOアジア・パシフィック・スーパーライト級王座を目指し、同級1位として12月2日に東京・後楽園ホールで同級5位ジェリッツ・チャベス(28=フィリピン)との王座決定戦に臨む。29日が横浜市の所属ジムでの練習打ち上げ。

いとこ2人の熱戦が脳裏に焼き付いている。尚弥が11月7日のワールド・ボクシングスーパーシリーズ決勝で世界5階級制覇王者ノニト・ドネア(フィリピン)との激闘を制し、2団体統一バンタム級王者に。拓真はノルディーヌ・ウバーリ(フランス)との王座統一戦でダウンを喫しながらも最終12回まで戦い抜いて判定負け。井上は「刺激は多分にある。良い試合に感動して、意識して燃える」と触発されたことは認めつつ、あえて気負わないことを心掛けているという。

「意識して燃えるとスパーリングが良くない。本当に自分のボクシングをすればいいと思います」

今回の井上兄弟のダブル戦は殴り合いの展開が多かった。「言葉にするのは難しいのですが、感じるものがありました」としながらも、幼少時代から一緒に続けてきたスタイルは「打たせずに打つ」。展開次第ではあるものの、リスク覚悟の勝負ではなく、常に追求する自らのボクシングでアジアのベルトもつかむ構えだ。

同門で同階級のIBF世界同級14位平岡アンディが30日(日本時間12月1日)にラスベガスで米デビューする。出発前には「お互いに頑張ろう」とガッチリと握手を交わした。また試合翌日の12月3日からWBO総会が都内で開催。バルカルセル会長をはじめとした理事が2日までに来日する予定で、試合視察の可能性もある。また同総会ではランキング委員会も開催予定でもあり、世界ランク入りへのアピールにもある。

発奮材料ばかりの環境下で拳を交えるチャベスは1発のパンチ力を警戒しなければならない相手となる。「1発が怖いので気が抜けないところはあります」と警戒しつつ、今にも力が入りそうな両肩をリラックスさせる。

「(WBO首脳へのアピールとして)チャンスですけれど、あまりいいかっこしないように。いつも通りに自分のボクシングをやりたいと思います」。

いくつもの「刺激」を受けながらも、井上家3人目の男は静かな闘志を燃やしている。