岩手・久慈市出身で総合格闘家とユーチューバーの「二刀流」に取り組む扇久保博正(33=パラエストラ松戸)が、群雄割拠のRIZINバンタム級(61・0キロ)戦線で主役に躍り出る。次戦にもタイトルマッチに挑む予定だが、ライバルはファイターだけではない。同県はエンゼルス大谷やマリナーズ菊池ら野球界の超一流を輩出。「負けられない。格闘技界の中でもそういう位置にいきたい」。世界最強へメジャー級の活躍を誓う。

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プロ15年目、扇久保は数々の死闘を制してきた。極真空手ベースの打撃で試合を作り、接近戦から寝技へ展開するのが必勝パターン。戦績は20勝4敗2分けを誇るが、天敵がいる。RIZIN、米ベラトールの「日米2冠」に輝いた堀口恭司(29)に13、18年と2度敗戦。ここ9年、それ以外の相手には公式戦黒星がなく「もう1度戦いたい。一番の近道はRIZINバンタム級のベルトを巻くことだと思う」。三度目の正直へ闘志を燃やす。

修斗王者でもある扇久保は「堀口選手に勝つまでは負けられない」。昨年はライバル団体のDEEP、パンクラス王者を連破した。負傷離脱中の堀口がRIZIN王座を返上し、同年12月には新王者が誕生。扇久保は4月にタイトル挑戦予定だったが、その選手が最高峰の米UFCに移籍し、新型コロナウイルス感染拡大も重なり試合は流れた。

かつては自身もUFCを目指した。16年には米国に1カ月半滞在し、共同生活しながら同団体との契約をトーナメント形式で争う通称「TUF」というリアリティー番組に出演。週1で試合を行い「めちゃめちゃ過酷だった」。3連勝も決勝で敗れ、夢舞台にあと1歩届かなかった。

国内から世界最強を証明する。「年齢的にUFCを目指すことはほぼないと思う。RIZINに拾ってもらい、骨をうずめる覚悟が大きい」。コロナ禍で実現しなかったものの、5月に仙台で戦う可能性もあった。「東北で試合することも目標の1つ。(今後)仙台で絶対にやりたいし、将来は地元の久慈や仙台で大会を開きたい」と思い描く。

3月にYouTubeで「おぎちゃんねる。」を開設。トレーニング、対談、レンガ割り、食レポなど硬軟織り交ぜた動画をアップし「バカなことばかりやっている感じだが、いい息抜き」。登録者は3990人(8日現在)で、今年中の1万人達成を見据える。故郷は13年のNHK連続ドラマ小説「あまちゃん」のロケ地。岩手と久慈の看板を背負い、強くて面白い「おぎちゃん」が全国区のヒーローになる。【山田愛斗】

◆扇久保博正(おうぎくぼ・ひろまさ)1987年4月1日生まれ、岩手県久慈市出身。5歳から極真空手を始めた。高校卒業後に上京し、総合格闘家を目指す。06年10月に修斗でプロデビューし、フライ級、バンタム級で世界王座獲得。18年からRIZIN参戦。得意技はチョークスリーパー。趣味はギター。好きな歌手は吉田拓郎。163センチ。