パワーアップした姿で初勝利を届ける-。先天性難聴という障がいを抱えながら、昨年12月にプロレスデビューした今井礼夢(16=ヒートアップ)が、有観客の興行ではデビュー2戦目となる31日の旗揚げ8周年記念大会(東京・ベースメントモンスター王子)に向け、意気込みを語った。取材では母で女性ボーカルグループ「SPEED」の元メンバー、自民党の今井絵理子参院議員(37)がリモートで手話通訳。成長を見守る愛息への思いも語った。

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礼夢はデビュー戦以来となる観客を迎えての試合に「頑張っている姿を見て、応援したいと思ってもらえるような試合をする」と誓った。デビュー戦では、同団体代表でもある田村和宏(40=TAMURA)と戦うも敗戦。「悔しいけど、ここからがスタート」と切り替えた。今大会では田村、井土徹也と組み、6人タッグマッチに出場する。

デビュー後、多くの反響があり自覚も出てきた。SNSでの発信も積極的に行うようになった。政治家として活動する今井氏は「もう一般人ではない。プロとして(振る舞いにも)気をつけないと」とアドバイス。その母も「体作りのために、食事のメニュー内容、食生活を見直した」とサポートを続ける。

礼夢も「練習生と違うのは、自分の試合でチケットを売らないといけないこと。SNSの重要性を感じている」と意識が変わりつつある。

10代から芸能界で圧倒的な活躍をした経験を持つ今井氏は、人前に立つ職業を選んだ息子に「やっぱりDNAなのかな。楽しんでいるのは、歌手時代の自分と共通している」と目を細めた。生まれつきの障がいで、落ち込む時期もあった。「三半規管が弱いと言われていて、プロレスをはじめる前は、体育の成績は1だった」とも振り返るが、日々成長を続け自覚も芽生えつつある息子に、今井氏自身が刺激を受けているという。

「夢を見つけた瞬間って、人ってここまで変わるんだなと。耳が聞こえないけれど、それもあって、集中力もあると感じる」

同団体では現在、試合をYouTubeで配信しているが「礼夢効果」で視聴数もアップし、ジムを訪れる人も増えてきたという。礼夢は、有観客以外に数試合に出場しているが、いまだ未勝利。「とにかく勝ちたい。足りないものは体作りも、技も、全部」。指導を受ける田村から、独自の練習メニューも与えられている。今までは礼夢に任せられていたが、田村は「デビューしてよかった、ではダメ。まだまだ気持ちが足りない。強くなることはどういうことなのかを、体で教える」と本気で向き合う。

プロとして負け続けるわけにはいかない。「人の心に伝わるような試合をしたい」。デビュー後には、通っていた特別支援学校時代の仲間からも、励ましのメールをもらった。勇気と感動を届けるため、成長した姿を見せ、初勝利をつかみにいく。【松熊洋介】

◆今井礼夢のデビュー戦 20年12月7日、神奈川・新百合ケ丘大会で田村とシングルマッチで対戦し、逆エビ固めで敗れた。手話で「頑張れ」という意味の両手でガッツポーズする動きで応援され、劣勢を何度もはね返した。後半には得意のブレーンバスターやバックエルボーを決めるなど、見せ場を作った。

◆今井礼夢(いまい・らいむ)2004年(平16)10月18日、東京都生まれ。小学生の時、プロレス好きの母の影響で興味を持つ。中学では野球をやっていたが、07年10月にヒートアップジムに入門。昨年3月に高校に進学せず、プロへの道を選択した。166センチ、67キロ。