GHCナショナル王者の杉浦貴(50)が井上雅央(51)との同級生対決に余裕の勝利で貫禄を見せつけた。

無観客で行われた今大会。対戦カードは登場するまで分からないというサプライズ演出の中、第4試合に登場した杉浦。静寂に包まれた会場からは普段はあまり聞きとることのできない、選手同士の会話やぶつかり合う音が響いた。

杉浦は序盤から積極的に仕掛け、場外で逃げ回る井上に詰め寄った。「休んでんじゃねえぞ、早くリングに上がれ!」。井上がようやく戻ると、今度は「お前が走れ」と井上にロープに跳ね返って、中央で待つ杉浦に攻撃してくるように指示。必死の形相で走り回る井上に対し「テンポが悪い、もっと早く!」と何度も走らせた。その後も息が上がり「ちょっと休ませてくれ」という井上の顔を容赦なく踏み付けた。最後は一瞬のスキをついて相手のお株を奪うスクールボーイで丸め込み、3カウントで勝利を収めた。

杉浦は試合後、笑顔で「まあ、会社から今日は休んでくれってことなのかな。名古屋で激しい試合をしたから今日は休みをもらいました」と余裕の表情。久しぶりの無観客となったが、集中していて気付かなかったのか「えっ、今日無観客だったの? あえて入れてないんだ。よかった~。名古屋であれだけ盛り上がって、東京は熱がないなと思っていた。ノア始まった以来の客入りだと…。良かったよ、安心した」とおどけてみせた。

4月29日の大会ではGHCナショナル王者の藤田との壮絶なビンタ合戦を制しベルトを奪取した。激闘から3日後の試合となったが軽快なパフォーマンスと、巧みな“話術”で井上を一蹴。「うっすら汗をかいたのでちょうどいい有酸素運動ができたし、疲労も取れた」と笑みを浮かべた。試合をしながら体力温存という超人ぶりを披露し、さっそうと会場を後にした。【松熊洋介】