ボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28=大橋)が2戦連続で100万ドル(約1億1000万円)のファイトマネーを手にする。19日(日本時間20日)、米ラスベガスで開催されるIBF同級1位マイケル・ダスマリナス(28=フィリピン)との防衛戦(WBA5度目、IBF3度目)を控え、4日に取材対応した大橋秀行会長(56)が明かした。再び「聖地」で1億超えの報酬を受け取る井上も同日、取材に応じ「いつも通り」と好調ぶりを報告した。

    ◇    ◇    ◇

日本人初となる聖地での2戦連続防衛戦で、井上は「ミリオンダラー王者」を確固たるものにした。大橋会長から明かされたファイトマネー額は、昨年10月、当時のWBO1位ジェーソン・モロニー(オーストラリア)戦に続き、軽量級では破格となる100万ドルだった。米老舗専門誌ザ・リングのパウンド・フォー・パウンド(階級超越した最強王者)ランクで2位に入る井上の「価値」に揺るぎはなかった。

自身16戦目となる世界戦へ、井上の自信も揺るぎない。試合10日前となる9日渡米を前に、5月29日には本格的なスパーリングを打ち上げていた。挑戦者に似た長身サウスポーで2階級上のWBOアジア・パシフィック・フェザー級15位木村蓮太朗(駿河男児)らとのスパーリングで最終調整。試合3週間前に打ち上げた。コロナ禍でダスマリナス対策用の外国人パートナーを呼べなかったこともあるが「いつも通り」と言える調整への手応えが、モンスターの胸にある。

19年11月、ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ決勝で判定撃破した世界5階級制覇ノニト・ドネア(フィリピン)が5月29日、計3度のダウンを奪ってWBC王者となった。王座返り咲きのシーンを見届けた井上は「率直に強かった」と冷静に振り返った上で「(ドネアが)WBCベルト持っているし、4団体統一には必要。次に無事勝てば、必然的にその流れになると思います」と、いずれ統一戦で再戦することを受け止めた。

大橋会長は「ドネアは豪快なKOで勝った。(井上も)豪快なKOでバンタム級ウォーズを盛り上げて」と大きな期待。有観客興行で初めて本場ファンの前でファイトを披露する井上は「どんなことを伝えられるか。すごく楽しみ」。ミリオンダラー王者としての実力を証明する舞台を待ち望んでいる。【藤中栄二】

◆ボクシング報酬メモ 階級によって金額に差があり、通常は体重が重いクラスほど報酬も高い。米国での世界戦は放送権などで多額の収入も得られるため、選手の報酬額もアップ。軽量級では12年にWBC世界スーパーバンタム級王者として西岡利晃が日本人で初めてラスベガスで防衛成功した際、100万ドルのファイトマネーを手にし、破格の報酬とされた。国内では94年に大きな注目を集めたWBC世界バンタム級王座統一戦で、辰吉丈一郎が薬師寺保栄戦で1億7100万円の報酬を得ている。