挑戦者の同級1位・矢吹正道(29=緑)が、安定王者の寺地拳四朗(29=BMB)を破り、初挑戦で世界奪取に成功した。

当初は9月10日に組まれた試合が、王者の新型コロナウイルス感染により、延期となった。待たされた形の矢吹だが、「延期はプラスしかない」とキッパリ。足りていなかったスパーリングをこなし、計量時は“バッキバキ”の研ぎ澄まされた肉体を誇示した。

この試合前まで12勝中11KOのハードパンチャー。ほとんどが序盤決着で、ラウンドを重ねると不利だった。その弱点も補うべく、必死に練習を重ねた。

妻恭子さんと長女、長男の家族が支えとなり、「小学生のころから何となくあこがれていた」という世界のベルトを奪い取った。試合後矢吹は「この試合で死んでもいいと思っていましたが、生きてベルトを巻くことができました」と語った。

 

◇矢吹正道(やぶき・まさみち)

◆本名は佐藤正道。「あしたのジョー」の主人公・矢吹丈からリングネームをもらった。ボクサーの弟も同様の理由で力石政法。

◆生まれ 1992年7月9日、三重県鈴鹿市。

◆アマ実績 四日市四郷高でインターハイ出場も、主な実績はない。

◆プロ戦歴 16年3月、1回TKO勝ちでプロデビュー。20年7月、日本ライトフライ級王座を獲得し、1回防衛。

◆家族 恭子夫人(28)と1女1男。

◆仕事 個人で建築業を営み肩書は自称「社長」。

◆タイプ 身長166・4センチの右ボクサーファイター。

◆タトゥー 右胸に「下克上」左胸に「大和心」と刻む。世界王者を目指しプロになった19歳当時、自身を鼓舞すべく入れた。逆文字の理由は「言葉が自分に向かって訴えるように」。

◆緑ジム 元WBA世界スーパーフライ級王者飯田覚士、元2階級制覇王者戸高秀樹以来、3人目。