輪島家DNA強し!! 元WBA、WBC世界スーパーウエルター級王者輪島功一氏(78)の孫、磯谷大心(たいしん、20=輪島功一スポーツジム)がプロデビュー戦で1回TKO勝ちを飾った。同じくデビュー戦の羽賀彬光(35=DANGAN越谷)と拳を交え、右ストレートで1度目のダウンを奪い、連打の追い打ちでレフェリーストップ。1回1分23秒、TKO勝利。祖父、叔父大千(ひろかず、現ジム会長)、孫の全員が1回KOデビューという記録を打ち立て、孫はKOタイムで2人を超えた。

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輪島氏の愛称「炎の男」の熱いDNAが両拳に宿っていた。祖父とは違い、長いリーチを持つ磯谷は左拳で顔と腹をとらえると、左フックから強烈な右ストレートで打ち抜いた。「右の感触はあった」。何とか立った羽賀を左右の連打で襲い続けてレフェリーストップ勝ち。「勝ててほっとしています」と安堵(あんど)の笑みを浮かべた。祖父、叔父大千氏(現ジム会長)に続き、輪島家3世代で1回KO勝利をつかんだ。

輪島家DNAを引き継いだ自覚がある。「ボクシングを知る自分の親族から言葉があり、1つ1つ受け止めて全部やりました」と振り返った。輪島氏の長女大子(ひろこ)さんと、元日本ランカーで現トレーナーの父和広氏の長男。元統一ヘビー級王者ムハマド・アリの孫ニコ・アリ・ウォルシュが8月に白星デビューした動画を父とチェックしたという。「注目や周りの人の期待もありプレッシャーと緊張はありました。ただダウンを奪い、最初よりも(展開が)見えてきたなと思いました」と大物の片りんも漂わせた。

リングサイド最前席で孫の快勝を見守った輪島氏は「完璧すぎて面白くねえよ。最後は良かった」と独特の表現で喜んだ。報道陣の前で孫との歓喜のグータッチもみせ「攻めるところは攻め、パンチを避けて打てた。すごく良かった。(王座)ベルトを巻くのは当然」と大きな期待を寄せた。ジムに掲げられた同氏の「練習は根性、試合は勇気」のモットー。磯谷は「常に頭にある」とうなずいた。

来年は東日本ウエルター級新人王にエントリー予定。磯谷は「世界王者になりたい。近い目標は祖父も取った新人王です」と力強く言い切った。思わず父和広氏から「調子に乗るなよ」と指摘されるほどの大物感。「炎の男」3世は階級も近い祖父と同じ道を進む1歩を踏み出した。【藤中栄二】

◆磯谷大心(いそたに・たいしん)2001年7月4日、東京・三鷹市生まれ。幼稚園からサッカーを始める。ポジションはGKで、強豪校の埼玉・正智深谷高3年まで続けて最高成績は県2位。中学時代から体力づくりのため、ボクシングジムにも通う。19年12月から本格的にボクシングの練習を開始し、20年10月、プロテストに合格。身長182センチの右ボクサーファイター。血液型はB。

◆輪島3世代のプロデビュー戦 三迫ジム所属の輪島功一は1968年(昭43)6月15日に輪島公一の本名でウエルター級4回戦に出場、竹川彰(笹崎)に1回2分51秒KO勝ちを収めた。功一の次男大千(ひろかず)は2008年(平20)5月27日に65キロ契約4回戦で真神風大谷(全日本パブリック)に1回2分33秒TKO勝ちしたが、王座には届かなかった。孫の磯谷大心のKOタイムは1回1分23秒で祖父と叔父を超えた。会場は3人とも東京・後楽園ホールだった。

◆主な2世、3世ボクサー 元世界王者では輪島功一氏の次男大千氏が08年にプロデビューし、現在はジムを引き継ぎ、会長就任。元WBA世界フライ級王者花形進の長男晋一もプロデビューし、現在ジムのマネジャーを担当。元WBC世界バンタム級王者辰吉丈一郎の次男寿以輝(大阪帝拳)や元WBC世界スーパーバンタム級王者畑中清詞氏の長男建人(畑中ジム)が期待のホープとなる。最近では「浪速のロッキー」赤井英和の長男英五郎(帝拳)が9月にプロデビュー(1回TKO負け)。海外では元統一ヘビー級王者ムハマド・アリの娘レイラがWBC女子スーパーミドル級王者を獲得。