新日本のエース棚橋弘至(45)は反則負けで新年のスタートを切った。

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6人タッグマッチで田口隆祐、ロッキー・ロメロと組み、IWGP USヘビー級王者KENTAらバレットクラブ勢と対戦。相手が持ち出した竹刀を奪い取ると、レフェリーの声を無視して振り下ろし続けた。5日の反則裁定なしのUSヘビー級選手権試合へ、手応えは十分。王座返り咲きを狙う。内藤哲也(39)は6人タッグマッチで敗れたものの、翌日のジェフ・コブ戦いへ余裕の表情を見せた。

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棚橋が激怒した。KENTAが持ち出した竹刀を奪うと、何度もライバルにたたきつけた。レフェリーの声も耳に入らず、無我夢中に続けた。新日本のエースがまさかの反則負け。IWGP USヘビー級選手権試合の前哨戦で、ベルトへの熱い思いがあふれ出した。

しばしば、同ベルトへの強いこだわりを口にしてきた。「アメリカで巻いてこそ意味がある」。昨年8月、米国でランス・アーチャーを倒して日本人初の王者になった。だが、同11月の大阪大会、KENTA戦で2度目の防衛に失敗。戴冠時に大歓声をくれた米国のファンへ、吉報を届けることはできず「中途半端に終わってしまった」と悔しがった。もう1度あのベルトを巻いて米国へ。思いを胸に、己と戦ってきた。

棚橋は大好きなラーメンも、ジャンクフードも、お菓子も、全てプロレスのために我慢する。朝はおかゆとサラダチキン、昼夕はサラダとタンパク質の豊富な食材に加え、2~3時間おきにプロテインを摂取。「チートデイ」と名付けた好きなものを好きなだけ食べると決めた日以外は、規則的な食生活を365日、デビューから20年以上繰り返してきた。

22年になって新調した水色とピンクのコスチュームは、仮面ライダー「リバイス」をイメージしたもの。コーナーに上がって見せる決めポーズは「カブト」、両手を広げるポーズは「ダブル」から着想を得たものだ。「仮面ライダーには本当に力をもらった」。自身も、コロナ禍で失ったものを取り返すために戦っている。コスチュームは腰のベルトが見えるようにデザイン。「プロレス好きだった方が会場に戻ってきてくれるのを信じているし、戻ってきてくれた時にチャンピオンベルトを巻いた僕が中心になって新日本プロレスを引っ張る姿を見せたい」と力を込める。

ピンチを力に変えるのがヒーローだ。1月5日、王者KENTAとのタイトルマッチは、自身初となる反則裁定なしのノーDQ(Disqualificationの略、失格)マッチ。竹刀を降り下ろしても、反則負けはない。本気になった棚橋が、暴れまわる。【勝部晃多】

◆棚橋弘至(たなはし・ひろし)1976年(昭51)11月13日、岐阜県大垣市生まれ。立命館大法学部から99年4月に新日本入団。06年7月にIWGPヘビー級王座初戴冠。以降、同王座最多戴冠8回、通算最多防衛28回、連続防衛11回は歴代2位。G1優勝は3度。21年8月、日本人初のIWGP USヘビー級王座を戴冠し、史上2人目となる4大シングル王座全戴冠を達成。得意技はハイフライフロー。愛称は「100年に1人の逸材」。181センチ、101キロ。