RIZINバンタム級王者の堀口恭司(31=アメリカン・トップチーム)が、同級ワールドグランプリ(GP)の1回戦で姿を消した。

パトリック・ミックス(28=米国)と対戦し、判定0-3で敗北した。昨年12月、王者セルジオ・ペティスに4回KO負けを喫して以来の再起戦だったが、プロ通算30個目の白星とはならなかった。暫定王者ベルトと優勝賞金100万ドル(1億2500万円)をかけて、8選手が参加した過酷なバンタム級トーナメントを勝ち上がることはできなかった。

スタンディングの攻防では強烈なカーフキックやフックで圧倒し、相手のバランスを崩させる場面もあった。10センチ以上身長の高い相手。長い手足を使って引き寄せられ、グラウンドに何度も誘われたが、最後まで極めさせなかった。それでも、判定で1ポイント差の敗退。悔しい2連敗となった。

雪辱を期す王者ペティスがケガのためにGP不在でも、堀口のモチベーションに変化はなかった。「試合は試合。全然問題ない。優勝すれば暫定王者。それで統一戦をすれば、その方が盛り上がるんじゃないですか」。試合でも、その言葉通りの集中力を発揮したが、世界最高峰の寝業師の牙城を崩すことはできなかった。

16年から米国フロリダに拠点を移した。すぐに感じたのは、日本と海外の「練習の質」だった。「日本はまだ根性論で『がんばれ、がんばれ』って教えている。『がんばれ』って言っても、技をかけられたらどうやって抜けていいかわからないじゃないですか? そこをアメリカはわかりやすく教えてくれる」。友人も家族もいない。最初は言葉もわからなかった。それでも、6年間、高いレベルに自身を置いて、総合格闘技としての「技」を磨き続けてきた。

その差には、危機感も覚えた。このままでは日本のレベルが上がらない。「日本の格闘技自体をもっと盛り上げないと、その差はあんまり埋まらないんじゃないかと思う。自分が先頭に立って『日本人も強いんだよ』というところを見せたい」。日本の格闘技界発展のためにも、堀口には負けられない理由があった。

背負うものが多いことが、苦になることはないのか。堀口は笑う。「ぜんぜん、そんなことはありません。自分は好きな格闘技をやっているから、何も苦ではない。わがままに生きているっていう感じ。本当にわがままなんです」。

だから、何度だって立ち上がるはずだ。19年にケガで返上したベラトール同級ベルトからは、大きく後退した。それでも、その過程を楽しみながら、堀口は必ず、奪還の時を待つ。【勝部晃多】