ボクシングWBAスーパー、WBC、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)が「初心」の黒髪リターンで日本人初の4団体統一王者を目指す。13日に東京・有明アリーナでWBO世界同級王者ポール・バトラー(34=英国)と4本のベルトを懸けて拳を交える。

10日、横浜市内でそろって会見。14年以来約8年ぶりという黒髪に戻すという「原点回帰」の決意を胸に秘め、年末の大一番に臨む決意を表明した。

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チームでそろえたジャージー姿で会見場に姿をみせた井上の髪の色は黒かった。金髪を中心に試合ごとにヘアカラーで飾ってきたが、大一番を前に黒髪となった。髪の色を問われ「よくぞ、聞いてくれました」と笑顔をみせ、こう続けた。

「黒く染めたのではなく、もう本当に地の黒色。その意味というのは4団体王座統一戦に向けて初心に戻る。多分、髪の色を黒くして試合するのは21歳の時なので。髪の毛というのはその時の気分、テンション、気持ちなどが含まれて表れると自分は思っている。この王座統一戦というところの意気込みとして初心に返ろうかなと思って黒くしました」

世界初挑戦と世界2階級制覇を成し遂げた14年以来、実に8年ぶりの黒髪リターンは「原点回帰」の思いを込めたものだった。

記者会見に世界主要4団体のベルトが並べられた。自然に気持ちの高ぶりがある。井上は「いよいよ、という気持ちでいっぱい。壇上に4本のベルトが並んでいるのを見ると、ますますやる気も増します。バンタム級での最終章だなという気持ち」と率直な気持ちを口にした。この会見でバトラーと初対面。「調子がよさそう。全体的に優れたボクサーですが、自分の仕事をやるだけ」と気を引き締め、バトラーとグータッチを交わした。

会見に同席した所属ジムの大橋秀行会長から「米国のスパーリング合宿を積み、6月の(ノニト・)ドネア戦よりも1・5倍強くなった」との言葉にも反応した。井上は「技術どうこうよりも、米国でスパーリングをしたことにすごく意義があった。1・5倍ぐらいは強くなったのでは」と自信たっぷり。バトラー陣営から「ディフェンスに弱点あり」との指摘を受けたことも「実はディフェンスが1番、得意なのだというところをみせたい」と風格を漂わせた。

4団体統一王者は世界でも過去8人しか誕生していない。日本初、アジア初、バンタム級初となる快挙に向け、井上は「4本のベルトはバンタム級のNO・1を示す、自分にとっては必要なもの」と最後のWBOベルト獲得だけに集中している。【藤中栄二】

〇…WBO王者バトラーは井上の実力を認めつつも、積極的に「弱点」を突く姿勢を示した。帽子をかぶり、トレーナーのギャラガー氏と会見に出席。初対面となった井上を横目に「私は非常に良い選手と闘う。試合は楽しみだが、かなり厳しい試合になる」と激戦を想定。イングランド初、英国2人目の4団体統一王者を目指す強い意欲をみせ「すべてを懸けて戦う。4団体統一は大きな意味がある。弱さをみせてきた時、そこを突く」と口にした。