キックボクシング42戦無敗を誇る人気格闘家の那須川天心(24)が9日、日本ボクシングコミッション(JBC)のB級(6回戦)プロテストに合格した。同日、東京・後楽園ホールで帝拳ジム所属で受験し、筆記と実技のテストを受けて即日の合格通知を手にした。3回のスパーリングでは日本バンタム級1位南出仁(27=セレス)と拳を交え、互角以上の実力を披露。晴れてプロボクサーとなり、4月にプロデビューすることが確実となった。階級はバンタム級か、スーパーバンタム級となりそうだ。

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派手なボクサー那須川の第1歩だった。約100人の報道陣が集まった聖地・後楽園ホールのリング。村田諒太(帝拳)や井上尚弥(大橋)ら期待の選手は興行内で観客にも披露したプロテストだったが、1人のみで報道陣だけに公開するという異例の形式だった。緊張ムードの漂う中、那須川はプラス思考の笑顔と緊張感の両面をみせつつ、ボクサーの実力を披露した。

実技テストでは、JBC担当者が見守る中、日本バンタム級1位南出との3回のスパーリングに臨んだ。まずフットワークと基本技術をみせつつ、左ジャブ連打からの左ストレート強打、右フックと多彩なパンチを繰り出す。接近戦からのクリンチまで披露。その後、シャドーボクシングでキレある動きをみせて締めくくった。

日本ランク1位と互角以上の内容をみせた那須川は「自信になる。客観的に見て本気度が伝わったのかなと」と手応え。JBC萩原実コミッショナーから合格通知を笑顔で受け取った。これで「プロボクサー那須川」が正式に誕生し、4月にプロデビュー戦に臨むことが確実となった。

所属ジムの本田明彦会長が「日本ランカーの実力があるところをみせたよ。1年以内には日本王座は取れる」と期待を寄せた。ボクシング初陣に備え、今月下旬から米ラスベガスでの実戦合宿も計画。那須川は「キック、ボクシングの両方がすごい競技。歴史があり、素晴らしい。どの競技も対応して極められるところを見せたい。それが僕の一番の動機」。この宣言を近い未来に体現するつもりでいる。【藤中栄二】

◆プロテスト 統括機関の日本ボクシングコミッション(JBC)が実施。16歳から34歳まで受験可能。スパーリング形式の実技、計量、シャドーボクシングなどの試験と検診、ボクシングの知識を問う筆記試験で構成される。1日のうちにペーパーテストと2、3回程度のスパーリングを行い、合否が判定される。ライセンスはA級(8回戦以上)、B級(6回戦まで)、C級(4回戦)が設定。通常はC級テストを受験するが、アマチュア経験や他格闘技の実績がJBCから認められればB級、A級のテストも受験できる。

◆那須川の階級 プロテストはスーパーフェザー級リミット周辺の58キロで受験した那須川はバンタム級(53・52キロ以下)、スーパーバンタム級(55・34キロ以下)をターゲットにすると発言。スーパーバンタム級はWBA、IBF王者アフマダリエフ(ウズベキスタン)、WBC、WBO王者フルトン(米国)の2団体統一王者2人が君臨。そこに前4団体統一バンタム級王者井上尚弥(大橋)が参戦した。バンタム級は4団体が空位。元5階級制覇王者ドネア(フィリピン)、元WBC暫定王者井上拓真、元K-1スーパーバンタム級王者武居由樹(ともに大橋)らがいる。

◆那須川天心(なすかわ・てんしん)1998年(平10)8月18日、千葉県生まれ。5歳で空手を始め、小学5年でジュニア世界大会V。その後、キックボクシングに転向し、14年7月にプロデビュー。16年からRIZIN参戦。プロ格闘技通算成績は47勝(31KO)無敗。165センチ、58キロ。