ボクシング前4団体統一バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)がスーパーバンタム級初陣仕様の下半身を作りあげた。

5月開催を目標に対戦交渉が進められ、発表秒読みのWBC、WBO世界同級王者スティーブン・フルトン(28=米国)への挑戦を想定。3日間にわたる静岡県内での走り込み合宿を敢行し、1日に打ちあげた。4月にWBA世界バンタム級王座決定戦を控える弟拓真(27)、リング復帰したいとこの浩樹(30=ともに大橋)とフルメニューを消化した。

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先月27日から始めた走り込み合宿最終日は、1分間のインターバルを入れた800メートル走×6本で締めくくった。常に井上尚自らが引っ張って先頭を走り続けた。4月に世界王座返り咲きを狙う弟拓真の世界戦に合わせたタイミングだったが、先月、現役復帰した元日本スーパーライト級王者のいとこ浩樹とともに1日2部練習のメニューに取り組み「フィジカルの基礎は作りあげた。今回の走り込みはメンタル強化も要素」と手応えを示した。

21年11月から指導を受けてきた元世界3階級制覇王者の八重樫東トレーナー(40)のもと、故障なくフルメニューを消化できた。スーパーバンタム級転向を意識して八重樫流トレーニングを導入し「1年4カ月ほどやって、だいぶ(体は)できている。体作りもそうですが、ボクシングのより良い動き、実際にボクシングに使える動きを意識しながら。スーパーバンタムで戦える体は持っていると思う」と手応えを示した。

3日間のフィジカルトレでゲキを飛ばした井上兄弟の父、真吾トレーナー(51)は「上半身も下半身もオールラウンドに鍛えられたと思う。見ているこちらの方が吐いてしまいそうな過酷なメニューだった」と明かす。八重樫氏も「こういうところで、最後までやり切れるメンタルがあるから強い」と太鼓判を押した。

5月開催を目標にWBC、WBO世界同級王者フルトンとの対戦交渉は大詰めで、挑戦発表も秒読み段階となっている。残り3カ月程度という時期ながら「(階級を)上げた時、パワーアップしなくてはというところに意識がいきがちですが、そこではなく、技術面などをクローズアップしています」と実戦練習へと気持ちを切り替えた。世界4階級制覇へ、着々と準備を進めている。【藤中栄二】

〇…弟拓真は4月の元WBA世界スーパーフライ級王者ソリスとのWBA世界バンタム級王座決定戦を控え、ギアを上げた。3日間の走り込み合宿の全メニューを消化し、心身ともに調子は上向き。走るフォームを修正するなど、体のバランスを意識しており「これをボクシングにつなげていきたい。ちゃんと合宿をやりきれたし、点数をつけるなら100点でいい」と笑顔。19年11月、WBC世界同級暫定王者として団体内統一戦に敗れてから約3年5カ月ぶりに巡ってきた世界王座返り咲きのチャンスだけに、気合十分だった。