元WBC世界バンタム級暫定王者で、WBA世界同級1位の井上拓真(27=大橋)が世界王座に返り咲いた。

同級2位のリボリオ・ソリス(41=ベネズエラ)に3-0の判定勝ち。ジャッジは116-112、117-111、118-110の大差。勝ち名乗りを受けると、右の拳を突き上げて喜んだ。 

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12回判定ながら、3-0で勝利した。井上は「自分的にはパンチも、もらってない。ポイントも勝っていると思っていた。勝利を確信していた」と胸を張った。5回には相手の左肘が自身の左目にバッティング。「初めてカットしましたけど、集中力も落とさず、戦えたので、これはいい収穫になりました」と結果に、手応えを示した。

プロ初黒星となった19年11月、WBC同級正規王者ノルディーヌ・ウバーリ(フランス)に判定負けして以来、約3年5カ月ぶりの世界のベルト。それは特別な意味も込められていた。

井上 やっぱり、兄が返上した1本目のベルト、まずはホッとしています。兄の弟というのは、現役をやっている以上、重圧はついてくるものと思っている。世界チャンピオンに返り咲けてよかった。

今年1月、兄尚弥がスーパーバンタム級に転向を表明し、保持していたバンタム級全てのベルトを返上。「兄がバンタム級にいるうちは世界戦は難しいと思って待っていた。ようやく、です」。さらに尚弥が拳を痛め、WBC、WBO世界スーパーバンタム級王者スティーブン・フルトン(米国)への挑戦が5月から7月に延期された。井上家に世界ベルトがない状態になったが、しっかりと“取り戻した”。

あくまで、これは序章。「王座返り咲きという低い目標だとモチベーションは上がらない」と、兄に続き、バンタム級の4団体統一を目標に掲げる。「兄が手放した4つを集める」と、残りの3つのベルトへの挑戦が始まる。近い日に、この日漂ったため息も、大歓声へと変えてみせる。【栗田尚樹】