プロレスラーとして再出発する元プロ野球巨人の外野手、高野忍(34)が、ゼロワンを立ち上げた故橋本真也さんの「後継者」を目指す。14日のゼロワン大阪大会のデビュー戦に向けて、愛知県内の空手道場で最終調整中。巨人時代は、腕相撲で清原和博氏(41)に勝ったという怪力の持ち主の得意技は蹴り。対戦相手を蹴り倒し、トップに君臨した橋本さんのように、キックで観客を沸かせられるようなスタイルを思い描いている。

 デビュー戦に向けて、高野は自宅近くにある愛知・豊田市の空手道場「修己会館」で練習を積んでいる。サラリーマンとしての仕事を終えてから背広を胴着に着替え、打撃や寝技など実戦を想定し、連日約3時間汗を流している。

 高野

 心境はまな板のこいです。深く考えずに当たって砕けろ、と。柔術を教わってはいるんですが、得意は蹴り。できれば、得意の上段回し蹴りを決めたい。

 和歌山・箕島高から中山製鋼を経て、98年ドラフト8位で巨人に入団した。現役5年間で17試合18打数3安打1本塁打の成績で03年に退団した。サラリーマンとして働き、もてあまし気味だった体力を発散しようと始めた空手に、いつのまにかのめり込んでいた。

 高野

 空手の蹴りは水平に蹴る。下から蹴り上げるキックボクシングやムエタイより重いんですよ。これを有効に使いたい。

 理想のレスラー像として思い描くのは「重爆キック」と呼ばれた蹴りを得意とした橋本さんだ。亡くなって3年半になる今も、携帯電話の着信音は橋本さんのテーマ曲「爆勝宣言」。ゼロワンの興行で目にした、橋本さんの姿は今も忘れられない。

 高野

 まず、あの大きさに圧倒されました。そしてあのすごく重くて、迫力がある蹴りに驚いた。自分も蹴りで倒せるようなレスラーになりたいと思います。

 体重は100キロと全盛期の橋本さんには約30キロ及ばないが、スクワットで200キロを持ち上げるパワーが持ち味。巨人では新人時代の宮崎キャンプで清原氏と腕相撲で対戦し、勝ったという逸話があるほどだ。

 高野

 そんなこともありましたね。でも、清原さんは神様、別世界の人です。引退試合をテレビで見て泣いて、その後のテレビの特番でも泣きました。清原さんがプロ野球で完全燃焼した姿を見て、自分も「もうひと花咲かせてみるか」と。リングに立つきっかけになりました。

 野球からプロレスに転向して成功を収めたのはジャイアント馬場ぐらい。厳しい世界だが、野球とプロレスには共通点があると思っているという。

 高野

 蹴りではバッティングと同じように太ももの内転筋を使うし、野球も格闘技も、下半身から力を伝えていくところが同じだと思う。投手はインコースを意識させておいてアウトコースで打ち取ったりしますけど、格闘技でも左のレバーを意識させて上段の蹴りを入れるとか、駆け引きは共通する気がします。

 小さいころからあこがれたプロレスへの思いが断てず、知人のリングアナウンサーのNAOKI氏に相談すると、とんとん拍子で話が進んだ。高野が勤務する会社の会長が、ゼロワンを運営するファーストオンステージの会長という縁もあって入団したが、同団体とは1年契約。結果を残さなければ生き残れないのはプロ野球時代と変わらない。

 高野

 嫁からはけがしたらどうするの?

 と反対されたけど、挑戦したいという気持ちを分かってもらって最後は納得してくれた。やるからには橋本さんのようにファンにインパクトを残したい。

 14日の大阪大会で、同じ空手家の小笠原和彦(49=創天会)と対戦する。【塩谷正人】