プロボクシングWBC世界フライ級王者内藤大助(34=宮田)が、26日に中国・上海で予定していた5度目の防衛戦が、開催3日前の23日に急きょ日本国内に変更された。中国の現地プロモーターが、開催に必要な書類手続きをしていなかったことが発覚。26日までに準備が整わないため、内藤が所属する宮田ジム側が国内開催への変更を決断した。試合は同じ26日に都内で開催する予定で、挑戦者も同じ熊朝忠(26=中国)で調整している。

 5度目の防衛戦を3日後に控えた内藤に、前代未聞のトラブルが降り掛かった。中国入り前日の23日、急きょ開催地が中国から日本に変更された。アウェーでの防衛戦へ万全の準備を整え、25日には現地で調印式と前日計量に臨む予定だった王者にとって、まさに寝耳に水のことだった。

 内藤が所属する宮田ジムの説明によると、宮田博行会長らスタッフは試合に先駆け、21日に中国・上海入りした。その時点で、現地プロモーターに依頼していた事務的処理が滞っていることが発覚した。翌22日に同会長らが北京の国家体育総局に掛け合い、興行実現に必要な複数の手続きを完了させたものの、肝心の会場、盧湾体育館の使用許可などが間に合わなかった。土、日を挟むこともあり、試合が行われる26日までに書類をそろえるのが不可能になった。使用許可に同様の手間がかかる中国の他会場での開催も断念、ジム側がこの日になって国内での開催を決断した。現地入りしている日本ボクシングコミッションの安河内剛事務局長も「プロモーターの問題」と話した。

 本来なら興行自体が中止されるところ。しかし、すでに26日にゴールデンタイムでTBSで中継されることが決定しているため、日程は動かすことができない。このため宮田ジム側は急きょ代替の会場を東京都内に変更して、同日に開催を強行することを決めた。現時点で挑戦者は同じ熊を予定しているという。試合まで3日しかないため、チケットがどこまで売れるか予想できず、興行収入は期待できない。それでも宮田会長は「チケットはできれば明後日にでも、安くして売り出したい。とにかく少しでも多くの人に内藤を見に来ていただきたい」と話した。中国国内でのチケット販売はまだ予約受け付けの段階で、ほとんど実害がないことがわずかな救いだった。

 今回のタイトル戦は、中国人の男子選手が初めて世界戦に挑む歴史的一戦として中国国内でも注目されていた。中国市場への参入を狙うWBCも、内藤が強豪挑戦者との対戦を義務付けられている指名試合を先送りにするほどだった。宮田会長は「中国での試合を楽しみにしていたファンのみなさんに申し訳ない。興行成功に向けて、最大限の努力をするしかない」と話した。24日、東京都内で会見を開き、事情を説明するという。

 内藤はこの日、ジムでのシャドーボクシングやミット打ちなど、軽めの練習を終えて練習を打ち上げた。水や米、もちなど食材を中国へ持ち込む準備を整え、遠征対策も万全だった。ただ、宮田会長から事情を説明されると、事実を受け止めた上で「場所がどこでも全力を尽くすだけです」と前向きに話していたという。