ノアの小橋建太(42)が、年内の全シリーズ、全試合出場を宣言した。三沢さんのお別れ会に2万6000人もの参列者が駆け付け、決意を新たにした。腎臓がんを克服後、今年3月に両ひじの手術から復帰したばかり。満身創痍(そうい)の体と戦いながら、三沢さんの魂を引き継ぎ、ノアの看板を背負って立つ覚悟を示した。

 三沢さんとの最後のお別れに来たファン1人1人に、小橋は丁寧に頭を下げ続けた。「僕が控室にいるときも、ファンのみなさんの声が聞こえてきたんです」。お別れ会には見込みの5倍の2万6000人ものファン、関係者が駆けつけた。途絶えることのないのファンの涙を見て、小橋の気持ちは吹っ切れた。

 「亡くなった後も、全力でプロレスをしていく。全戦、参戦するつもりです。もうとにかく全力で行きます」。お別れの会終了後、小橋は今年の全シリーズ参戦を宣言した。

 6月13日に三沢さんが亡くなって以来、決意を雄弁に語ろうとはしなかった。「(死を)信じたくない気持ちだった。斎場に行って、骨を拾っても、現実と思えなかった」。しかし、この日を転機に、三沢さんのいない現実と向き合う覚悟を決めた。

 全試合出場は、この数年、病気や故障と戦い続けた小橋にとって、過酷な目標でもある。06年には腎臓がんを患い長期休養。復帰後には両ひじの手術を強いられ、今年3月に復帰したばかり。限定出場を続けてきたが、6月シリーズは三沢さんの死もあり、全試合に参戦した。その裏では米航空宇宙局(NASA)で開発された、ひじに微弱な電流を流す最新治療を続けていた。満身創痍には変わりない。だが、リングに立ち続けることで、常に全力だった三沢さんの魂を引き継ぐつもりだ。

 「プロレスを好きでいてくれるファンて、こんなにいるんだ…」。感慨を深めつつ、こうも言った。「役員とか社長とか(ノアの新人事が)あると思うけど、そんなの関係なしに、リングに集中する。しっかりやることで、答えが出てくる」。小橋が、ノアの新たなけん引役になる。【森本隆】