<プロボクシング・全日本新人王決勝:ライトフライ級5回戦>◇20日◇東京・後楽園ホール

 異色の「具志堅2世」が新人王に輝いた。ライトフライ級知念勇樹(25=琉球)は前田健太(20=角海老宝石)に判定勝ち。03年の同ジム改名後、初の新人王となった。知念は暇つぶしでボクシングを開始し今でもベルトへの欲求がない。それでも13回連続防衛記録の具志堅用高氏のトレーナーを務めた仲井真重次会長(57)期待の逸材は敢闘賞も獲得した。MVPは東日本に続きミドル級胡朋宏(21=横浜光)が、技能賞はスーパーライト級菊地祐輔(21=新日本仙台)が選ばれた。

 知念は終始マイペースだった。インターバルではイスに座って足を組みリラックス。試合後のリングでは腕組みしながら「今後っすか?

 とにかく休みたいですね」と言い放った。与那城トレーナーは「変わってるんですよ」と苦笑した。

 この業界では珍しい「ゆるキャラ」だ。「王者になりたい欲求はないですね」。父が経営する中古車販売会社に勤務すべく19歳で大阪から沖縄へ。「暇すぎたから」琉球ジムに入った。仲井真会長が「入れ墨した変なのが来た。すぐ辞めると思った」ほどゆるい感じだったが、練習には「体を鍛えたいから」と打ち込んだ。パンチ力もあり、同階級だった具志堅氏と重なった会長らの説得でプロ入りを決意。体質的に太りにくい上に主食が菓子パンと減量に苦労せず、無傷の7連勝で新人王に上り詰めた。

 今年3月から左拳を痛めていたが、封印するつもりだった左のフックで1回にダウンを奪った。会長は「あとは具志堅みたいな、完ぺきなボクシングが出来れば」。それでも知念は「具志堅さんは何級ですか?

 ライトフライ?

 そうなんや。よく比べられますけど、どうしたらいいか分からへん」と笑い、敢闘賞にも「敢闘って言葉の意味自体、分からないです」と目を丸くした。「とにかく半年ぐらい冬眠します」。ハングリーさとは無縁の異彩を放つ新星が、沖縄から誕生した。【浜本卓也】