<X-1

 WORLD

 EVENTS>◇20日(日本時間21日)◇米ハワイ州ブレーズデル・アリーナ

 【米ホノルル=藤中栄二】2008年北京五輪柔道男子100キロ超級金メダリストで、総合格闘家の石井慧(23=アイダッシュ)が初勝利を挙げた。デビュー2戦目で、同じく2戦目のササエ・パオゴフィー(34=米国)と3分3回ルールで対戦。初回1分20秒すぎにグラウンド勝負に引き込み、同2分50秒、腕固めでKO勝ちした。昨年大みそかのデビュー戦で判定負けした吉田秀彦戦から3カ月。初の金網マッチにも動じない完勝で成長をアピールした。今後は海外試合を視野に入れつつ、契約する日本のSRCのリングで、藤田和之との対戦を希望した。

 円形の金網リングに立った石井は敵だけを凝視した。実戦で初の左構えでゴングを聞くとローキックなどで距離を取りつつ、パオゴフィーの打撃を見極めた。1分20秒すぎ、相手の右拳をかわすと右足を持って一気に倒した。柔道の上四方固めの体勢で攻め続けた。左腕をつかむとすぐに腕固め。2分50秒、相手タップによるKO勝利でレフェリーから左腕を上げられると、笑みが止まらなかった。

 石井

 1回目に負けたので、今回の方が緊張しました。でも相手のパンチが見えた。タックルが入ってテークダウンした時、敵の腰が予想以上に重くて寝技ができるかなと思ったけど(勝って)ひと安心。思い通りでしたね。

 サイト上でレンガ職人とされるパオゴフィーは、石井よりも2センチ大きい身長183センチ。現UFCライト級王者BJペンのジム所属で昨年7月にデビュー。石井と同じく総合2戦目だった。実力は未知数だが、石井は勝利だけが欲しかった。昨年大みそかに吉田に負けて以来、79日ぶりの試合。その呪縛(じゅばく)が解けたように、敗戦から得た教訓を明かした。

 石井

 吉田選手に試合でやられた間合いとか(打撃が)きた時に打ち返す(カウンターの)まねを取り入れた。それをずっとやってきた。転んでもただでは起き上がりませんよ。

 石井らしいパフォーマンスで会場ムードを盛り上げた。石川さゆりの「天城越え」の曲で入場すると、歓声がわき起こった。勝利後は、動画サイトで人気が出た英国の美少女ベッキー・クルーエルが「男女」という曲に乗って行う矢を射るようなポーズも披露。「ユーチューブでベッキーを見て腕の角度を練習しました。石川さゆりさんも大ファン。いつか2人に会えるんじゃないかと、したたかな思いでしました」と石井節もさく裂。試合後は現地ファンから記念写真もせがまれた。

 約2カ月半のハワイ修行は1日5~6時間、打撃と寝技の両方を練習してきた。強くなるためだけに南国で時間を費やしてきた。オフの買い物とドライブだけが楽しみだった。4月上旬には帰国予定。今後もSRCと相談の上、海外戦を視野に入れるが「吉田戦の負けは国内で勝たないと埋め合わせできない。SRCならば特に藤田選手とやりたい」と希望した。ほろ苦いデビュー戦を乗り越え、初勝利を挙げた石井は、ハワイで確実に1歩を踏み出した。