5月29日の全日本・神戸大会の試合前にスーパー・ヘイト(41=本名・平井伸和)を殴った傷害容疑で、元プロレスラーTARUの多留嘉一容疑者(47)と、フリープロレスラーMAZADAの正田和彦容疑者(36)が22日、兵庫県警葺合署に逮捕された。スーパー・ヘイトは試合後に急性硬膜下血腫で開頭手術を受け、現在も入院中。2人は無期限出場停止処分を受けたが、MAZADAは7月1日に処分が解けて試合に復帰していた。

 多留容疑者と正田容疑者は葺合署から出頭を命じられ、弁護士を通じて、この日の出頭を連絡。多留容疑者は午後1時15分、正田容疑者は同1時41分に逮捕された。ヘイトの母親が先月19日、弁護士を通じて告発状を提出、捜査の結果、逮捕となった。両容疑者はいずれも容疑を認めている。

 事件は5月29日の神戸大会、試合前の控室で起こった。多留容疑者は「日ごろの態度が悪いことを叱ったが、反省の色が見られず殴った」。正田容疑者は2人の仲裁に入ったが、ヘイトの態度に立腹して顔面などを殴ったという。その際、稔(現・田中稔)KONO(現・河野真幸)が居合わせた。5人は悪役軍団ブードゥー・マーダーズのメンバーだった。関係者が間に入ってその場は収まったが、ヘイトは試合後のインタビューの最中に嘔吐(おうと)。救急車で運ばれて開頭手術を受け、硬膜下血腫と診断され意識不明の状態が続いた。

 その後、多留容疑者が6月1日に会見、自分1人で殴ったことを認め、事実上の引退状態となった。他の3人も現場に居合わせたことから、連帯責任で無期限出場停止処分になった。同16日に東京・九段の全日本の事務所で、稔とKONO、関係者が葺合署の事情聴取を受け、多留容疑者以外は暴力をふるってないことが確認されたとして、3人が7月1日に処分解除。その後、試合に復帰している。

 ヘイトは現在も入院中で、介護が必要な状態が続いている。葺合署では「重度の記憶障害が残っていて事情聴取ができる状態ではない。母親からの告発状を被害届の代わりとした」と説明。1度は暴力をふるっていないとされ試合復帰した正田容疑者の逮捕で、被害者側との食い違いが明らかになった。全日本の内田雅之社長(49)は「こんなことになって残念です。司法の場で、事実が明らかになることを願っています」と話した。【小谷野俊哉】

 ◆TARU

 1964年(昭39)8月23日、神戸市生まれ。本名多留嘉一。96年にWARでプロレスデビュー。その後メキシコへ渡り、悪役として活躍。闘龍門JAPAN、DRAGON

 GATEを経て、04年からフリー。全日本、新日本などで活躍。05年に全日本で悪役軍団ブードゥー・マーダーズを結成して総帥に。07年、全日本で小島聡と世界タッグ王座獲得。10年、ビッグ・ダディ・ブードゥーとアジアタッグ王座獲得。185センチ、110キロ。

 ◆MAZADA

 1975年(昭50)5月23日、福井県坂井市生まれ。本名正田和彦。95年11月15日にグレン・マロニス戦でデビュー。その後、メキシコ転戦中にNOSAWA論外、竹村豪氏と東京愚連隊を結成。米国TNAを経て、04年から全日本参戦。10年8月からTARUが率いる悪役軍団ブードゥー・マーダーズに参加。172センチ、87キロ。