米総合格闘技UFCは、五輪方式のマッチメークで成功した-。来年2月26日、さいたまスーパーアリーナで開催するUFC日本大会(日刊スポーツ後援)のPRのために来日中のUFCロレンゾ・フェティータ会長兼最高経営責任者(CEO=42)は29日、日刊スポーツの独占インタビューに応じ、UFCを世界的な人気ブランドに成長させた成功法則を語った。また今後のUFC日本進出の方向性や、総合ファイター石井慧(24)ら日本人選手のUFC参戦を待ち望んでいることも明かした。

 UFC人気は今や米国から全世界へと広がっている。フェティータ会長兼CEOは、その成功の法則を静かに明かした。ヒントになったのは世界的祭典の五輪だったという。

 フェティータ会長

 4年に1度の五輪は有名な選手が必ず勝つとは限らない。無名でも本当に強い選手が勝つ。最初からの方針は純粋にスポーツであれ、ということ。強い選手同士をぶつける。有名だからと知名度だけでマッチメークするケースがあるが、それが行き詰まる理由だ。我々は本当に強い選手同士をぶつけてきたのが良かったのだろう。

 UFCの選手契約はシビアだ。契約が残っていても、2連敗で解雇されるケースが数多い。勝ち続けた者だけが立てる舞台。厳しい生存競争を勝ち残る意識を植え付け、最高の試合を提供してきた。その徹底した指針がファンに受け入れられた。

 当初、UFCは赤字続きの経営だった。01年1月、UFCを買収したが、最初の5年間は赤字で、同会長は4400万ドル(約33億円)の私財を投じた。

 04年からは選手が活躍するまでを試合を含めてドキュメントで追う番組「ジ・アルティメット・ファイター」(TUF)を1000万ドル(約7億5000万円)の資金を投じて地上波で放送。これで多くのファンを獲得できたという。

 フェティータ会長

 番組では試合を25%。75%は選手のプライべートや練習内容をみせ、人々の共感を得た。野蛮なものではなく、スポーツであるところを印象づけ、子供や女性にも受け入れられた。TUFで北米を中心に人気が広がっていった理由だろう。

 来年2月の日本での大会が成功すればもう1度、日本で開催する意向があることも明かした。

 フェティータ会長

 来年やるとしたら年末。日本は知識あるファンが多いので定期的にやりたい。出し過ぎは特別感がないので開催は年2回。ただ大みそかはなしだ。敬意を表するのが日本。日本の既存団体の邪魔をせず、友好的に参入したい。岡見、五味といった日本人が増えたので地元で試合してもらいたかった。

 さらに石井慧をはじめ日本人ファイターのUFC参戦を呼びかけた。

 フェティータ会長

 石井に会ったこともあり、UFCデビューの可能性もあったが流れた。彼には興味があるし、格闘技の能力もみせている。あとは何が必要かを見る。他に青木、川尻、北岡にも興味がある。日本人に挑戦してほしい。最高峰の舞台と対戦相手を整えて待っている。【構成=藤中栄二】

 ◆ロレンゾ・フェティータ

 1969年、米ネバダ州ラスベガス出身。91年にサンディエゴ大を卒業。証券・不動産などの事業を所有・運営する企業の社長兼CEOを務めた後、00年からラスベガスに18以上のカジノを所有する米最大級の会社ステーション・カジノ社長に就任。

 01年からUFCの資産を取得し、UFCを運営するズッファ社を設立。同社オーナーとして高校時代からの友人ダナ・ホワイトに社長を任せたが、09年以降、自らズッファ社の会長兼CEOに就任。マーケティング、制作、法務、財務を含む全業務を監督している。家族はテレサ夫人と子供3人。