08年北京五輪柔道100キロ超級金メダルの総合格闘家・石井慧(25=レインジム)が、人類最強の男に完勝して米総合格闘技UFCへの道を切り開く。今日31日開催の「元気ですか!!大晦日!!」(さいたまスーパーアリーナ)で、旧PRIDEヘビー級王者エメリヤーエンコ・ヒョードル(35=ロシア)と対戦。都内での極秘調整を経て30日の計量を97・4キロで1発クリアした石井陣営は、立ち技、寝技、持久力のすべてで圧倒するつもりだ。ネット回線による世界中継で、存在を猛アピールする。

 格闘技人生のすべてをかけて決戦に臨む、覚悟の表れだった。都内で行われた試合前日の計量。石井は隣り合わせに立つヒョードルの存在をまるで意に介さず、無表情を貫いた。08年の初対面以来、3年ぶりの再会だったが、ほほ笑みかける相手に視線を合わせなかった。その後、場所を移した公開会見のステージ上で形式的に握手をかわしたが、柔道家時代から憧れ、追い続けてきた男に“決別通告”したも同然だった。

 念願だった旧PRIDE王者との一戦は、若い石井にとって通過点であり、実力を証明する絶好の機会にもなる。石井は「もう、やるしかない。自分の力を出し切って頑張ります」と短い言葉に思いを凝縮した。今回は国内の地上波放送がない代わりにネット回線のニコニコ動画で世界中に生中継される。石井が参戦を希望しているUFCのロレンゾ・フェティータ会長兼CEOは「石井に興味がある。能力があり、あとは何が必要かを見る」と注目しており、「査定試合」の意味合いも含まれている。

 新たな舞台に立つチャンスを広げ、尊敬するヒョードルにも認められる存在になるには、完全勝利しかない。石井は29日の個別会見後、都内のジムで極秘裏に最終調整を行った。相手が得意とする打撃での勝負、寝技に持ち込む動き、常にプレッシャーを与え続けるスタミナを再確認した。

 帰国時は95キロだった体重は、この日の計量で2・4キロアップ。ヒョードルには8・6キロ及ばないが、セコンドを務めるコーチのバックリー氏は「ヒョードルは実績があり、最近では破壊力のあるローキックを放つことも分かっている。だが、石井のスピードと技術は格段に上がっている。あらゆる状況になっても勝算はある」と自信を口にした。

 今年の格闘技界を締めくくるメーンイベントでの決戦。石井が大一番の舞台に立つ。【山下健二郎】